Your Complete Guide to Factor-Based Investing

2017年01月07日

スマートベータとして流行中のファクター投資について解説した本です。

著者のひとりである Larry Swedroe は ETF.com で記事を連載しています。
ファクター投資についてのアカデミックな知識を数式なしの文章で読むことができるのでおすすめです。

この本の内容はブログとかぶる部分もありますがより体系的です。
著者らは、ビッグデータを使ったデータマイニングを避け、真に使うべき価値のある真のファクターを選り分けるために以下の5つの基準を設定しています。

・Persistent ・・・ 長期間にわたって機能している。
・Pervasive ・・・ 様々な国々、地域、セクター、アセットクラスで機能している。
・Robust ・・・ 様々な基準で機能している(バリューファクターであれば、PBRの他にPERやPCFRなどでも機能している)。
・Investable ・・・ 投資可能であること。紙の上だけでなく、現実世界でリターンを出せること(取引コストなど)
・Intuitive ・・・ リターンとその持続性についてリスクベースまたは行動ファイナンスベース(behavioral-based)の合理的な説明がある。

この基準をクリアするファクターとして、マーケットベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、プロフィタビリティ/クオリティ、ターム、キャリーを解説しています。また、付録では、配当、低ボラティリティ、デフォルト、タイムシリーズモメンタムといったファクターも取り上げています。
各ファクターの解説以外には出版後のリターンの変化やファクターの分散効果といった話が書かれています。
ブログと同様にほぼすべてが学術的な研究に基づいた内容なので信頼感がありますし、難しい数式が出てこないのはありがたいです。

やや不満に感じた点は、アカデミックな内容に偏っていて実際の投資家の求めるものとズレがあるのかなと思えたところです。ほぼすべてがロングショート前提の話なので、ロングオンリーではどうなのかというのがわかりにくいです。


以下は読みながら取ったメモです。正確な内容ではないところもあるかもしれません。また、ほぼすべての話に文献の引用がありますがその辺は省略しています。

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リセッションと信用縮小・資産価格の下落

2016年09月20日

リセッションと金融セクターの相互作用について分析した What happens during recessions, crunches and busts? というワーキングペーパー(2008年)を読みました。

OECD21か国を対象に1960年~2007年の期間におけるリセッション・信用縮小・資産価格(住宅・株式)の下落について調べた研究です。リセッションにおける実体経済と金融セクターの関係について多数の国・長期のデータベースを使った研究はあまりないとのことです。

結論ですが、クレジットクランチ(信用の大幅な縮小)や住宅価格の大幅な下落を伴うリセッションは、通常のリセッションよりも落ち込みがひどく期間も長くなるとのことです。特に住宅価格の下落は他のいろいろな変数を調整した後でも一貫して有意で、景気後退に大きな影響を持つとの結果です。

全体にかなり情報量が多いので、興味の引いた部分をメモします。

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木材と金でマーケットタイミング

2016年07月23日

木材価格と金価格によるマーケットタイミング戦略を解説した Lumber: Worth Its Weight in Gold を読みました。

なぜ木材?と思ってしまいますが、これは木材価格がアメリカ景気循環の先行指標である住宅市場の活動に対して敏感に反応するからという理由です。
下のグラフはレポートに掲載されていた建築許可件数とリセッションのグラフです。60年代後半や2000年始めなどあまり一致していない時期もありますが、住宅市場と景気循環についてはよそでも取り上げているのを見るので、基本的には先行指標として機能しているのかなと思います。



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Global Investment Returns Yearbook 2016

2016年03月31日

クレディスイスの Global investment return yearbook 2016 が公開されていました。

毎年発行されているこのレポートには3本の分析記事と23ヵ国・3地域における1900年からの株式・債券・短期債のリターンのデータが掲載されています。
記事のうち2本は「証券市場の真実―101年間の目撃録」の著者であるエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントンの3人によって書かれており、今年は政策金利が株式・債券に与える影響について分析しています。タイムリーな話題ですね。
3番目の記事は今回の危機(2008年)と過去2回の危機(1890年代と1930年代)における株式・債券の値動きについて書かれています。

レポートは英語ですが、図やグラフが多用されいてるため眺めているだけでもなんとなく見当がつきます。長期データに基づいた分析なので読む価値は非常に高いと思います。

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集合知についてのメモ

2015年10月22日

集合知について書かれた本をいくつか読んだので感想を書いてみます。

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

最初に読みました。集合知について書かれた有名な本です。
集団の知恵がうまく働いた事例が羅列されているのですが、なぜうまく働くかという説明があまり書かれていません。


「多様な意見」はなぜ正しいのか
「多様な意見」はなぜ正しいのか

こちらはもっと専門的な感じで、集団の知恵が働く原理まで書かれています。しかし、文章が読みにくかったため途中で挫折してしまいました。


集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書)
集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書)

3冊目に読んだ本です。
第1章で集合知についての理論的な話がコンパクトにまとめられています。第2章以下はあまり関係ないと思われる話題が多かったので流し読みしました。

この本では上の2冊についても紹介しており、「みんなの意見は案外正しい」は語り口は巧みで面白いが集合知の根拠に迫ろうとする学問的アプローチが欠けているという評価、「「多様な意見」はなぜ正しいのか」は集合知という問題にたいして正面からとりくんだ好著との評価をしています。

以下は「集合知とは何か」による解説です。

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What Works on Wall Street 第4版

2015年10月10日

2011年に出版された「ウォール街で勝つ法則」の第4版を読みました。

「ウォール街で勝つ法則」は主にファンダメンタル系の指標の有効性を過去数十年のデータで検証した本です。定量的ファンダメンタル投資家にとってはバイブル的な一冊となっています。

第4版で検証している指標は、時価総額、PER、EV/EBITDA、PBR、PCFR、PSR、アクルーアルや負債比率などの財務指標、配当利回り、バイバックイールド、株主利回り、EPS変化率、利益率、ROE、ROA、レラティブ・ストレングス、などです。
初版から追加されたのは、EV/EBITDA、財務指標、バイバックイールド・株主利回り、といった指標です。また、複数のバリュー指標を使った合成バリュー指標も検証しています。

各指標ごとに上位・下位10%のリターン・リスク・ドローダウンの分析や10分位数別の成績が掲載されています。充実した内容ですが、数字データメインなので読み物としてはあまり面白くないかもしれません。ただ、無駄な話が少なくグラフが多用されているので英語本としては見やすいと思います。ページ数は多いですが。

過去データを使ってファンダメンタル指標を網羅的に調べた本は少ないです。おすすめの一冊。
初版と比べて検証条件も結論部分も良い方向に改善されており、既読の人も十分読む価値があると思いました。

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ウォール街のモメンタムウォーカー

2015年08月14日

ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)
ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)

株式市場の3大アノマリーのひとつ「モメンタム」について書かれた本です。

内容は、効率的市場仮説の説明、モメンタム戦略の歴史やなぜ機能するかという話、債券・海外株式・コモディティなど各資産クラスの特徴、スマートベータとは何か、絶対モメンタムと相対モメンタム、著者の提唱するデュアルモメンタム戦略、その他モメンタムについてあれこれ、といった感じです。
モメンタムがメインですが、小型株効果やバリュー効果にも触れていますし、ヘッジファンドやCTA(商品投資顧問業者)のパフォーマンスなど幅広い話が書かれていました。

この本の特徴は、アカデミックと実践家の世界の話がバランスよく書かれているところだと思います。
たとえばモメンタムの歴史についての部分では、まず実戦家としてリバモア、ワイコフ、ドレイファス、オニール、ドンチャン、タートルズといった面々の紹介があり、続いてアカデミックの世界の話として、誰が初めてモメンタムの研究を行ったのか、それに対する批判、その後に誰がどんな研究が発表したのか、といったことが解説されています。
著者によるとモメンタムに関する学術論文は300を超えるとのことです。英語の苦手な個人投資家にはとても調べきれない量なので、このように情報をまとめてくれるのはありがたいです。

著者の提唱するデュアルモメンタムですが、相対モメンタムと絶対モメンタムを組み合わせた戦略です。
相対モメンタムとはある資産の値動きが他の資産の値動きと比較して強いか弱いか見る方法、絶対モメンタムとはある資産の価格がその資産の過去の価格と比べて強いか弱いかを見る方法です。
S&P500やACWI(世界株価インデックス)で両者を比較すると、相対モメンタムのほうがリターンは高いものの、絶対モメンタムのほうがボラティリティとドローダウンは低くシャープレシオも高くなるそうです。デュアルモメンタムは、両者の補完的な性格を活かすことで高リターン&低リスクの成績を達成する戦略とのこと。シンプルであいまいな点がないよくできた戦略だと思いました。


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投資家が大切にしたいたった3つの疑問

2015年06月26日



PSRの発案者として有名なケン・フィッシャーの本です。
ケン・フィッシャーは成長株への長期投資で有名なフィリップ・フィッシャーの息子ですが、彼自身長期にわたり資産運用の世界で平均を上回る成績を残してきたそうです。また、自力で築き上げた資産によりフォーブス誌の「最も裕福な米国人400人」に入っているとのこと。

この本の主題はたったひとつ、株式市場で勝つには「他人の知らないことで、あなたが知っていることは何か?-自分だけの優位性とは何か?」を知らなければならないというものです。
フィッシャーによると、相場は現在知られている情報をすべて織り込むため他人が知っている情報をもとに売買をしても勝つことはできないそうです。効率的市場仮説ですね。しかし、彼はそこで話を終わりにせず、市場にはまだまだ知られていないことが多いため、それを知ることで平均を上回る成績をあげることができるという立場をとります。
この他人が知らないことを知るために、題名に書かれている3つの疑問を使おうというのが彼の主張です。

① 実際には間違っているが、私が信じているものは何か?
② あなたが見抜けても、他人には見抜けないものは何か?
③ 私の脳は、自分を騙して何をしようとしているのか。自分を見失わせるのか?

また、いったん機能する手法を見つけてもそれで終わりではありません。
フィッシャーは、市場の持つ効率性という特徴からいったん機能する手法もそれが広く知られてしまうと有効性を失ってしまうと言います。したがって長期にわたり市場を上回る成績を残したいのであれば、継続的に検証をして革新を進めていかなければならないそうです。

市場の効率性を訴えてインデックスファンドを勧める本や、市場の非効率を訴えてファンダメンタル投資やテクニカル分析を勧める本は多いですが、全体として市場は効率的だが非効率を発見すれば勝つことができる(ただしその優位性もみんなが知ると消えてしまう)というスタンスの本は珍しいと思いました。個人的にはこの見方が現実世界をいちばんうまく説明しているように思えます。

問題は書き方にちょっとクセが強いかなと感じた点です。
この本は基本的にデータを使って客観的に検証すべしというスタンスで書かれていますが、少ないデータをもとに断定口調で言い切っていたり、検証の規準が緩く思えるものが多かったです。
たとえば、長期の相関が多少あることを著者も認めているのにPERの有効性はまったくないと断定していたり、それほど有効に見えない1枚のグラフを掲載しただけで株式益回りと債券利回りの比較が有効だと言い切っていたりします。また、著者が有効だとした指標が機能しないときはそのときは相場に織り込まれていたと(正しいのかもしれませんが)検証不可能なことを書いていたりします。

そんなわけで、この本の基本的な原則論はすごくためになりましたが、個々の内容についてはどれだけ信頼していいかちょっと判断しにくかったです。

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The next economic disaster

2015年04月17日


The Next Economic Disaster: Why It's Coming and How to Avoid ItThe Next Economic Disaster: Why It's Coming and How to Avoid It
(2014/07/09)
Richard Vague

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民間債務の重要性について書かれた The next economic disaster を読みました。

この本によると金融危機の原因は民間債務の急激な増加と持続不能な水準であり、政府債務残高、経常赤字、財政赤字、低金利や金利の下落、為替レート、などの指標は危機を予測するのに役に立たないとのことです。
この証拠として、2008年と1929年のアメリカの金融危機、1991年の日本のバブル崩壊の他、世界各国の危機における民間債務の動きをデータとして提示しています。
金融危機が起きてから現在まで政府債務の話(緊縮か拡張かなど)が議論の中心になっていますが、危機の原因が民間債務であることから、民間債務の研究・監視をもっとしっかりしなければならないというのが著者の主張です。

債務の増加が危機を引き起こすというのは他の人も指摘している話ですが、他書と違うのは危機を予測する数字的な条件を設定しているところです(と本人も書いています)。
主要国においては、①民間債務/GDP比が5年で18%以上の上昇、②民間債務/GDP比の水準が150%以上、の2つの条件を満たしたときに金融危機が起きる可能性が極めて高いとのことです。

2章では金融危機に対処する政策について書かれていますが、こちらはデータに基づいたものではないです。

民間債務が危機の原因というのはシンプルでわかりやすい話ですし、データも提示されていて面白かったです。数値が明確なのも実用性がありそうで良いと思いました。
しかし、アマゾンのレビュー数は29個と多くなく、評価もそこまで高くない感じです。著者が学者ではないことや、「国家は破綻する」のようにデータの使い方に厳密な定義がされていないことが問題なのかなという気がしました。


以下はもう少し詳しいメモです。
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Global Investment Returns Yearbook 2015

2015年03月07日

クレディスイスのHPで2015年の Global Investment Returns Yearbook が公開されています。

このレポートには、毎年3本の分析記事と23ヵ国と3地域における1900年からの株式・債券・短期債のリターンのデータが掲載されています。
これまでに書かれてきた記事には、新興国市場の分析(長期リターン・ボラティリティ・アノマリーなど)、経済成長と株価リターン、インフレが資産価格にどんな影響を与えるのか、為替と株式・債券・インフレ、などがあります。興味深い話が多いですし、どれも多数の国の長期データを使って分析した内容でとても勉強になります。

毎年最初の2本の記事を書いているのはエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントンの3人で、彼らは「証券市場の真実―101年間の目撃録」の著者です。
ちょっと英語が難しいのですが、図やグラフが多くてそれを見るだけでもなんとなく見当がつきます。読む価値は十分にあると思います。

さて、2015年版ですが、Industries: Their rise and fall, Responsible investing: Does it pay to be bad?, Do equity discount rates mean revert? という3本の分析記事が掲載されています。正直いつもよりちょっとマイナーな話題かなと感じましたが、興味のある人には面白い内容だと思います。

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