購買力平価

2016年04月26日

為替について何冊か読んだので基本的なことをまとめてみます。長くなりそうなので何回かに分けて書きます。今回は購買力平価についてです。


○ 購買力平価説

同じ物は同じ価格になるという「一物一価の法則」に基づいて為替レートが決まるという説です。
例えば、りんごが日本で100円、アメリカで1ドルで売られていたとすると、りんごを基にした購買力平価は1ドル=100円になります。
もし、同じ物が別の国で違う値段で取引されているのであれば、価格の安い国で購入し、価格の高い国で売ることによって利益を得ることができます。

購買力平価を基にすれば為替レートの動きはインフレ差によって決まることになります。高インフレの国ほど通貨安になるということです。先の例では、インフレによって日本のリンゴが1000円になれば、購買力平価による為替レートは1ドル=1000円となります。

購買力平価の問題としては以下の点が挙げられています。
・輸出入が難しく裁定が成り立たない財やサービスの存在。
・輸送費、関税などの障壁。

購買力平価には問題があるものの、長期で見れば成り立つと考えられています。
Global Investment Returns Yearbook 2012 には1900年~2011年の期間における19か国のドルに対する名目・実質為替レートが掲載されています。名目為替レートは国によって大きく動いていますが、そのほとんどはインフレによるもので、実質為替レートの変化率はプラスにせよマイナスにせよ年率1%以下にしかなっていないとのことです。



また、このレポートには1970年~2011年までの83か国の名目為替レートの変化率とインフレ率(どちらも対US)の散布図も載っています。こちらを見ても為替レートとインフレの相関が強いことが分かります。



購買力平価には絶対的購買力平価と相対的購買力平価があります。

○ 絶対的購買力平価

ある地点で一物一価から換算される為替レートです。有名なビッグマック指数もこれの一つです。より広範囲なバスケットを使った絶対的購買力平価は世界銀行やOECDが算出しています。

OECD によると2015年のドル円の購買力平価は106円となっており、現在はやや円安という状況です。グラフを見てわかるように、固定相場制の時期を除いて全体的には購買力平価の方向に沿って動いていますが、大きなかい離が10年以上続いていることもあります。



絶対的購買力平価の問題点としては物価を比較するバスケットの扱いがあります。どの財やサービスでバスケットを組むのか、バスケットの中身が国によって異なるといった問題です。


○ 相対的購買力平価

為替レートが適正と考えられる時点を設定し、そこからの物価変化率を調整して算出します。

相対的購買力平価の問題点として、基準点が正しいという根拠がないこと、物価を調整する指数によって結果が変わってくる、というのがあります。

下のグラフは国際通貨研究所が公開している消費者物価指数、企業物価指数、輸出物価指数を使って算出した相対的購買力平価です。消費者物価指数を使った購買力平価では円高、企業物価指数と輸出物価指数を使った購買力平価では円安になっており、差もかなり大きいことが分かります。さらに基準点を変えると結果もまた変わってきます。



ちなみにどの物価指数を使うかですが、一般には国際競争と関係しない国内のサービスが含まれる消費者物価指数よりも、企業物価指数や輸出別科指数の方が適切との解説をよく見ます。


○ 過去の平均値との比較

竹中正治教授は過去の平均から計算する方法も紹介しています。
勘違いしないで!為替相場の長期的な割安・割高を見抜く「相対的購買力平価原理」の正しい見方

下のグラフはBISが発表している1964年からの円の実質実効為替レートとその期間平均値です。実効為替レートとは貿易量などでウェイスト付けした多国間に対する為替レートです。
グラフは上が円高で下が円安となります。現在のレートは過去の平均からすると円安の領域にありますが、幅はそれほど大きくありません。ただ、これも期間の取り方によって平均値は変わってきますし、平均値が正しいという保証もないので絶対的な基準というわけではないです。


※BISの実質実効為替レートはCPIベースの指標ですが、日銀レビューの図表5によるとCPIもPPIもそれほど大きく変わらない感じです。

ドル円の実質為替レートはあまり見なかったので、こちらで計算しました。為替レートはOECD、物価は消費者物価指数と企業物価指数、アメリカはCPIとPPIでどれも年次データを使っています。物価のデータが1970年からだったので為替レートも1970年からです。
これを見るとどちらも過去の平均からは円安の領域にあり、特に企業物価指数・PPIでの円安が大きくなっています。



以上、絶対的・相対的購買力平価の為替レートを見てきましたが、全体的には円安の傾向があるようです。
ただ、1964年からの各国の実質実効為替レートを比べると日本の円高が際立っているという話を書かれている方もいます(実質実効為替レート 超円高・アジア通貨安の構造)。実際、1964年を起点にすると円高だと思います。

個人的な感想としては、絶対的購買力平価がシンプルで分かりやすいのかなと思います。無理に根拠があいまいな基準点を設定する必要がないですし、実際の物価感覚からも妥当性がある気がします。もちろん国内の財・サービスを反映しているというのは問題もあり絶対的ではないのでしょうが、ある程度の目安にはなるのかなと思います。




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