金利と為替レート

2016年05月04日

今回は為替と金利についての話です。


○ 金利平価説

為替は金利差を打ち消す方向に動くという説です(高金利通貨→通貨安、低金利通貨→通貨高)。マーケットが効率的であればフリーランチはないので、高金利通貨の金利収益は通貨安によって相殺されてしまいます。
金利平価説にはカバー付きとカバー無しがあります。

カバー付きとは、現時点の先物価格が金利差と一致しているかどうかです。例えばA国の金利が2%、B国の金利が0%だとすると、1年先の先物価格はA国が2%低くなります。でなければ裁定取引で利益を出すことができます。
カバー無しは実際の為替レートの動きが金利差と一致したかという話です。

実証的な研究では、カバー付きは成り立つもののカバー無しは成り立っておらず(高金利通貨に有利)、この現象はフォワード・ディスカウント・バイアスなどと呼ばれる有名なパズルになっているとのことです。このパズルを説明する統一的な見解はまだないそうです。

ちなみに先物市場の価格付けと現実の為替レートの動きが一致する必要はないので、先物市場は金利差で決まるが将来の為替レートがどう動くかはまったく別の問題であるという見解も成り立つようです。投資家にとってはこの意見が単純で分かりやすいかなと思います。

○ キャリートレード

Global Investment Returns Yearbook 2012 に19か国・1900~2011年のデータを使ったキャリートレードの収益が載っています。
前年の短期債の収益で並べ替えた上位5か国と下位5か国のキャリートレードのリターンとのことで、1900-2011年の全期間、1900-1950年の戦前、1950-1971年のブレトンウッズ時代、1971-2011年のブレトンウッズ以後の4つの期間の成績が掲載されています。
使用しているデータは年次です。キャリートレードが比較的短期の戦略であることを考えると、年次データで通用すればより短期のデータではもっと効果的だろうとのこと。



名目短期金利を使ったキャリートレード(左の4本)は、1900-1950年の期間がハイパーインフレの影響がありマイナスリターンだったものの、全期間では1.1%、ブレトンウッズ以後の1972年-2011年は2.3%の実質リターンとなっています。
一方で実質短期金利を使った場合(右の4本)は全ての期間で利益となりますが、戦後に限れば名目金利のキャリートレードよりもリターンは低くなっています。

このレポートでは、その他いくつか文献を紹介しています。

・Lustig and Verdelhan (2007), The cross section of foreign currency risk premia and consumption growth risk.
1953年からのキャリートレードの有効性を調べており、ブレトンウッズ時代でも有効であったとのこと。

・Antti Ilmanen (2011), Expected Returns: An Investor’s Guide to Harvesting Market Rewards.
G10の国々を対象に1983~2009年の期間のキャリートレードを週次リバランスで検証。金利が上位3か国と下位3か国のキャリートレード(50%・30%・20%のウェイト)。年間超過リターンは6.1%、ボラティリティは10.5%、シャープレシオ0.61。ドローダウンは、2008年36%、1993年28%、1986年26%。

キャリートレードが機能している理由としては暴落への保険という説を紹介しています。キャリートレードは平時では利益を生むものの、金融危機などの不安定な時期に大きな損失となってしまうというとのことです。
下のグラフは日銀レビューに掲載されていた04年~09年初めまでの円キャリートレードの累積リターンです。日本の投資家にとっては暴落への保険という話は馴染みやすいですね。




○ 金利差と為替レート

金利収益は別として金利差に対して為替レートがどう動くのかというのを見てみます。

下はマネックスラウンジのコラム為替相場は本当に金利差で動くのか(その1)に掲載されていた1975年以降の日米の政策金利と為替レートのグラフです。



70~80年代は1ドル200円を超えており、それ以後の円相場の動きがわかりにくいので90年以降の政策金利・長期金利・為替レートのグラフも作ってみました。データは日本の政策金利は日銀、長期金利は浜町SCIさん、米国金利はFED、為替レートもFEDから取得しました。



グラフを見るだけだと金利差とドル円の関係は微妙です。03年以後は比較的一致して動いているようにも見えますが、それ以前は逆方向に動いていることも多く一貫しているようには見えません。

FEDのサイトではデータが比較的簡単に取得できるので、米-英、米-豪、米-ユーロ圏の金利差と為替レートもグラフにしてみます。







パッと見ただけでは日米と同じく連動して動いているときもあれば逆方向に動いているときもあるかなという感じです。明確に関連ありとは言いにくいです。

金利と為替レートに関しては、どの金利どのレートを使うのかという問題もあります。金利には政策金利・長期金利、実質金利・名目金利がありますし、為替にも実質為替レートと名目為替レートがあります。
理屈からすると、名目金利・名目為替レートに共通するインフレ率は購買力平価によって調整される問題なので実質金利と実質為替レートが重要になりそうですが、購買力平価も短期では必ずしも有効に機能しているといえないのがやっかいです。

物価連動国債金利の日米格差と実質円/ドルレートの関係についてというレポートでは、物価連動国債を使った実質金利と実質為替レートを比較しています。
これによると「日米金利格差が広がると同時点の実質為替レートが円高になる」という関係があるとのことで、さらに「実質為替レートの日米金利格差に関する実際の感応度は理論的な予測よりもかなり大きい」そうです。ただ、データが2008年以降と期間的にかなり短いのが残念です。



実質金利と実質為替レートについてはGoogleで検索すると多くの文献がヒットするのですが、難しい内容が多くてちょっと読む気になれませんでした。この問題についてはとりあえずは保留しておきます。


○ 感想

金利と為替の関係は、金利収入まで含めると高金利通貨が有利なようですが、為替レートの動きだけを見るとあまり一貫していないのかなと感じました。ただ、03年以降のドル円に限ると金利差と為替は比較的連動しているように思えます。





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