バリューとモメンタムの統合

2016年06月02日

バリューとモメンタムの統合戦略について書かれた文章をいくつか読みました。

まずはなぜ日本市場でモメンタムが機能していないかを考察した Cliff Asness の Momentum in Japan: The Exception That Proves the Rule です。
この論文では、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、日本の4地域のバリューとモメンタムのロングショート戦略を検証しています。

条件は以下のとおりです。
期間 : 1981年7月~2010年12月
対象銘柄 : アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、日本の4地域、時価総額の上位90%(2010年末のアメリカで707銘柄。大型株です)。
バリュー戦略 : PBR。3分位で上位と下位のロングショート。
モメンタム戦略 : 直近1か月を除く12か月リターン。3分位で上位と下位のロングショート。
リバランス : 月次。

バリューとモメンタムの結果は以下のとおりすべての地域でプラスのリターンとなっています。ただし、日本はバリューが圧倒的に強い一方でモメンタムのリターンはゼロすれすれでした。また、アメリカのバリューとモメンタムの成績もいまひとつ魅力に欠ける数字とのことです。




次にバリュー50%/モメンタム50%の混合戦略ですが、こちらもすべての地域でプラスのリターンかつt値も有意な数字です。
混合戦略がうまく機能しているのは、各国のバリューとモメンタムポートフォリオの相関が-0.47~-0.63と負の数字になっているためです。著者は、バリューとモメンタムは負の相関になっているので、両者を別々に考えるよりもひとつのシステムとして考えた方が良いと言っています。



下のグラフは日本市場におけるバリューとモメンタムの12か月リターン(上グラフ)と、50/50ポートフォリオの12か月リターン(下グラフ)です。最大損失は、バリュー-61%・モメンタム-49%に対して、50%/50%ポートフォリオは-13%と非常に小さくなっています。




ちなみに、1981年7月~2010年12月の期間を後付けで見た場合、最適なシャープレシオが得られるバリューの割合はアメリカ・イギリス・ヨーロッパが54~55%、日本が70%になるそうです。

そのほかこの論文では、日本市場のモメンタム戦略のシャープレシオは他の値と比べて統計的にあり得ないほど外れた数字ではないこと、バリューとモメンタムをひとつのシステムと考えた場合には日本の高いバリュー効果と低いモメンタム効果は驚くような数字ではないこと、ファーマ・フレンチの3ファクターモデルで回帰すると単純にモメンタムは機能している(この部分は僕にはよくわからなかったですが)といったことが書かれています。


上の論文はロング・ショートで見た場合の話ですが、ロングオンリーのポートフォリオでバリューとモメンタムの混合戦略の効果を調べた記事もあります。

WHY INVESTORS SHOULD COMBINE VALUE AND MOMENTUM は50%/50%戦略をロングオンリーで検証しています。条件は以下のとおりです。
データ : ケネス・フレンチのデータベース
期間 : 1927年~2015年
対象銘柄 : アメリカ株
バリュー戦略 : PBR。10分位で上位10%のロング。
モメンタム戦略 : 直近1か月を除く12か月リターン。10分位で上位10%のロング。
リバランス : 月次。

結果を見ると、バリュー単体のリターンは12.08%、モメンタムは16.73%でS&P500の9.85%を上回っています。バリューとモメンタムの相関は67.21%とマイナスではないもののバリューとS&P500の84.65%・モメンタムとS&P500の81.46%よりも低い値です。
50%/50%ポートフォリオの成績は、リターン15.04%・標準偏差24.9%でバリューとモメンタムの中間くらいの数字になっています。



著者は下のような5年移動平均リターンのグラフを示しつつ、50%/50%の混合戦略を使うことでバリューやモメンタム単体で使ったときに起こる長期低迷を避けることができると評価をしています。






一方でちょっと辛口なのが Dual Momentum の著者が書いた Value and Momentum are Correlated という記事です。

こちらも50%/50%ロングオンリーの検証で条件は以下のとおりです。
データ : ケネス・フレンチのデータベース
期間 : 1927年~2015年
対象銘柄 : アメリカ株。時価総額の中央値50%より上の銘柄。
バリュー戦略 : PBR。3分位の上位のロング。
モメンタム戦略 : 直近1か月を除く12か月リターン。3分位の上位のロング。
リバランス : 月次。

結果は、ロングオンリーのバリューとモメンタムの相関は0.8で依然として高く、50%/50%ポートフォリオのリターン・標準偏差・シャープレシオ・最大ドローダウンのいずれもモメンタムに及ばないとのことです。



2つの記事の検証結果は基本的に同じような数字になっていますが、著者2人は反対の評価を与えています。
僕の感想は後者の意見に近く、50%/50%の混合戦略は基本的にモメンタム単体の成績を下回っており期待ほど成績は向上していないかなと感じました。
ただ、モメンタムも未来永劫機能し続けるかはわからないので、単一の戦略に頼るリスクを避けるという意味では50%/50%ポートフォリオの方が安心感があると思います。


次にバリューとモメンタムのブレンド方法について書かれた記事も見てみます。

How to Combine Value and Momentum Investing Strategies はバリューとモメンタムを半分ずつ組み込んだ50%/50%戦略と、バリューとモメンタムを1つに統合したコンボ戦略を比較しています。

検証条件は以下のとおりです。
期間 : 1963年7月1日~2013年12月31日。50年間。
対象銘柄 : NYSE取引所の時価総額の上位40%。かなりの大型株が対象です。
バリュー戦略 : EBIT/EV(Total Enterprise Value)上位10%のロング。
モメンタム戦略 : 直近1か月を除く12か月リターンの上位10%のロング。
コンボ戦略 : バリューとモメンタムをそれぞれランク付けして両者の平均値で並べる。上位10%のロング。
リバランス : 月次。

対象銘柄全体のリターンは10.22%でS&P500と同じレベルとのことです。
バリュー単体は15.89%、モメンタム単体は18.25%でともに全体のリターンを上回っています。また両者の相関は0.53で、バリューと全体の0.83・モメンタムと全体の0.79よりも低い値です。

次にコンボ戦略と50%/50%戦略の成績ですが、50%/50%戦略がリスク調整済みでは最も良いパフォーマンスだったのに対して、コンボ戦略のリターンやシャープレシオはそれを下回る結果となっています。コンボ戦略はボラティリティは最も低いもの、リターンも最低の数字です。




著者は続けてコンボ戦略の別バージョンも検証しています。
上のコンボ戦略はバリューとモメンタムをランク付けしてその平均値を取る方法でしたが、別バージョンはモメンタム→バリューの順に並べ替える方法とバリュー→モメンタムの順に並べ替える方法です。

モメンタム→バリュー : モメンタム戦略の上位10%グループをバリュー(EBIT/EV)で半分にわける。
バリュー→モメンタム : バリュー戦略の上位10%グループをモメンタムで半分に分ける。

結果ですが、モメンタム→バリューはシャープレシオとソルティノレシオこそやや向上したものの全体的な成績はそれほど変わっていません。一方でバリュー→モメンタムの成績は大きく向上し、リターンやシャープレシオは単体のバリュー・モメンタムや50/50戦略を上回る数字になったとのことです。



バリュー→モメンタムの成績が良いという結果は他の調査とも一致するそうです。ただし、モメンタムはより頻繁なリバランスを行ったときに成績が良いため、コストを含んでいない検証結果には注意する必要があるとのことです(この検証もコストは含んでいません)。

著者自身はバリューとクオリティを組み合わせた自分のシステム(Quantitative Valueという本を書いています)の方がバリュー&モメンタムの成績よりも良く、かつモメンタム単体との相関も低いことからコンボ戦略を使うことはないとのことです。




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