トレンドとバリュエーションの併用

2016年11月17日

株式市場へのシンプルなアプローチという記事でトレンドとバリュエーションを併用してマーケットタイミングを判断する方法が紹介されていました。

記事ではトレンドの判断に月足の10か月移動平均線をバリュエーションの判断にはシラーPERを使っているのですが、両者を組み合わせることで、上昇トレンド・割安、上昇トレンド・割高、下落トレンド・割安、下落トレンド・割高の4つの領域が作ることができます。
で、S&P500がそれぞれの領域にいたときのリターンを計算すると、マイナスリターンになるのは下落トレンド・割高のときだけになったとのことです。
この結果から、現在マーケットのバリュエーションは割高であるものの、株価が崩れて下落トレンドに入るまでは心配しなくていいとアドバイスしています。



トレンドとバリュエーションで判断するという戦略は確かにシンプルで良いなと思ったのですが、元記事を見ると対象期間が1900年~2013年となっています。
個人的には戦後のみの成績も知りたかったので、株価とシラーPERをダウンロードして過去50年くらいのリターンも調べてみました。

まずYahooFinanceから取得したS&P500の株価データを使った結果です。シラーPERはシラー教授のHPからダウンロードできます。
対象期間は1966年~2016年10月までで配当は含まれていません。シラーPERは1966年~2016年の平均である19.8倍を使いました。
各領域のリターンは以下のとおりです。下落・割高局面を除く3領域でプラスで元記事と似た傾向になりました。

上昇トレンド・割安局面 8.6%(181か月)
上昇トレンド・割高局面 9.2%(235か月)
下落トレンド・割安局面 7.0%(121か月)
下落トレンド・割高局面 -8.2%(73か月)




シラーPERを16.7倍(全期間のデータの平均)にしたときの結果はこちらです。
各領域のリターンは変わってきますが、それでも下落・割高局面以外はプラスというのは同じです。

上昇トレンド・割安局面 15.3%(124か月)
上昇トレンド・割高局面 6.3%(292か月)
下落トレンド・割安局面 3.5%(99か月)
下落トレンド・割高局面 -1.5%(95か月)


次にシラー教授のデータに掲載されている株価データを使った結果です。
期間は同じく1966年~2016年10月までで配当は含まれていないと思います(配当データも掲載されていますが、ここでは株価に手を加えていません)。シラーPERは1966年~2016年の平均の19.8倍を使いました。
このデータを使うと下落・割安局面でのリターンがマイナスになってしまいます。シラーPERを16.7倍で計算しても同じでした。

上昇トレンド・割安局面 11.9%
上昇トレンド・割高局面 9.6%
下落トレンド・割安局面 -0.4%
下落トレンド・割高局面 -5.9%


シラー教授のデータには実質株価も掲載されているので、そちらも調べてみました。このケースだと下落・割安局面でのリターンが大きなマイナスになってしまいます。

上昇トレンド・割安局面 7.5%
上昇トレンド・割高局面 7.2%
下落トレンド・割安局面 -5.3%
下落トレンド・割高局面 -6.9%


最後に配当込みのリターンも知りたかったので、MSCIのUSインデックスを株価に使ってみます。シラーPERはS&P500のものなのであくまでも参考程度ですが。
期間は1971年1月~2016年10月で、シラーPERは期間平均の19.7倍を使いました。
こちらは元記事と同じく下落・割高局面以外は大きなプラスとなっています。

上昇・割安局面 11.4%
上昇・割高局面 12.4%
下落・割安局面 9.4%
下落・割高局面 -2.5%


以上のように結果は株価データや条件によってかなり変わってしまいます。ただ、上昇トレンドであればバリュエーションが割高でも割安でも大きなプラスリターンになっているというのは一貫しています。

下落トレンド・割安局面のリターンが不安定だったのは少し残念で、もうちょっとはっきりしたプラスになるかなと思っていました。
ただ、割安といってもシラーPERが平均よりも低いという緩い基準なので、もう少し条件を厳しくすればはっきりしたプラスの成績になるのかもしれません。




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