割高なシラーPERをどう考えるか

2017年03月10日

現在、シラーPERは歴史的に見ても割高な29.11倍にまで上がっており、このバリュエーションの高さに警告を鳴らす記事を見かけます。


Shiller PE Ratio

一方でこの指標は1990年代以降のほとんどの期間で平均以上の水準にあり、タイミング戦略がうまく機能していないという問題もあります。

シラーPERについては過去にいくつかの記事を書きました。
バリュエーションと投資タイミング
グローバル市場でのCAPEレシオの有効性
Global Value: How to Spot Bubbles, Avoid Market Crashes, and Earn Big Returns in the Stock Market
金利とインフレ率とPER

今回新たにいくつかの記事を読んだので、メモと感想を書いておきます。

You Would Have Missed 780% In Gains Using The CAPE Ratio, And That’s A Good Thing

CAPEレシオが20倍を超えた1992年末に株を売っていたら投資家は780%もの利益を逃してしまった、CAPEレシオは役に立たない、という批判に対しての反論です。

→ CAPEレシオが高くなるほどドローダウンも大きくなる。

→ 資金を債券に移動させていればリターンは悪くない。10年債へのスイッチは594%、30年債へのスイッチは1026%のトータルリターンとなった。

→ グローバル市場でCAPEレシオの低い国に投資していればより高いリターンとなった。下位25%の国への投資リターンは累計2521%で、S&P500のリターンを年率で4%以上も上回った。

反論ではありますが、CAPEレシオが機能していないことについての直接的な反論ではない感じです。


Superman And Stocks: It's Not The Cape (CAPE), It's The Kryptonite (Cash Flow)!

・PERも(10年)、標準化利益を使ったPERも、さらにインフレを調整したCAPEもそれほど違いはない。PERとCAPEの相関係数は0.86。

・CAPEと将来のリターンは逆相関している。ただし、特に今後1年という期間での説明力は弱い。



・1927年~2016年の期間で、過去50年の中央値のCAPEを使ってマーケットタイミングを図った結果が下の表。
縦列はマーケットタイミングの閾値(10%であればCAPEが平均よりも10%上であればTビルに資金を移す)、横列は資金の何%を株式に残すか。
結果は、CAPEを信頼すればするほどリターンは悪化する。



・現在のCAPE27倍は債券利回りとの比較で見れば過去の平均よりもかなり低い。

・現在のCAPEレシオは割高だが、配当+自社株買いの利回りは2001年~2016年の期間で安定している。ただし、アメリカ企業は2015年と2016年の上半期に利益を上回る額の配当と自社株買いを行っており、キャッシュフローの継続性には疑問がある。


Ken Fisher: Why CAPE is useless

マーケットPE・CAPEレシオに批判的なケン・フィッシャーの記事です。

・CAPEレシオは(2008年の危機以前の水準に達した)2013年から割高シグナルを発している。そこからもう4年も強気相場が続いている。

・アラン・グリーンスパンが根拠なき熱狂と警告した1996年12月以後の39カ月にS&P500は116%上昇した。

・CAPEレシオの計算には2008年・2009年のリセッションが含まれている。これは現在の経済環境とは関係ない。また、2年後に計算から除かれたときにCAPEレシオが低下するが突如として強気になるのか?

・会計方式の変更によって時系列の比較は意味がない。

・名目株価とインフレ調整の実質株価を比べるのはおかしい。

・CAPEレシオが次の10年のリターンを予測できるとしても、投資家の関心は今年と来年のリターンがどうなるかだ。


What If Earnings Never Collapsed?

リーマンショック時の利益の落ち込みがなかったと仮定すると現在のCAPEレシオは24.4倍になる。
(リーマンショック後の75カ月の利益を危機前の利益で代用し、データのない2016年9月~現在までの利益は3%成長で計算する)


感想

シラーPERと長期的な株価の相関という点については反論記事がありません。

問題は、この指標が1年といった短期ではあまり役に立たないこと、シラーPERが割高になってもリターンがマイナスになるわけではないこと(An Interesting Analysis of Shiller's CAPE Ratio によると今後10年の株価のリターンが10年債のリターンを下回るのはCAPEレシオが27.6倍を超えてからとのことです)、1990年代から一部の期間を除いてCAPEレシオがずっと割高な水準にあることでしょう。

特にそれまで10~20倍で推移していたシラーPERが、90年代以降に20倍以上に切りあがっていることについてのすっきりした説明がないのが厳しいです。
個人的に一番納得できるのは、全体的な経済環境が安定して低インフレと低金利により株式のリスクプレミアムが低下したという説明ですが、金利とPERを使ったFEDモデルによる株価リターンの説明力はそれほど高くなかったりします。
また、全体的なPERの上昇という現象は80年代の日本でも起きています。

結局のところ、一般に適正値とされるPER15~20倍という数字に明確な根拠がないところが問題なのかなと思います(益回5~6.6%で何となく適正な感じはありますが)。
PERの適正値というのが曖昧で、さらに10年単位で適正値からのかい離が起こるため、この指標を使ってリターンを予測しようとするとどうしても無理が出てしまうのでしょう。

とはいえ現在の割高なバリュエーションを無視するのも危険な気がします。
いまのところ僕の対策としては、株価の長期トレンドでキャッシュを増やしていくというのが良いかなと思っています。バリュエーションと長期トレンドの組み合わせはトレンドとバリュエーションの併用で書いたようにシンプルかつ効果的に思えます。
長期トレンドによるマーケットタイミングは基本的にバイ&ホールドよりも成績が落ちると僕は考えていますが、それでも大きなドローダウンを避けるとことができるのは魅力的です。

あとはリセッションを予想してポジションを変えるという方法でしょうか。
ただ、リセッションの予想は難しく分が悪い賭けになるので過大な期待はできないと思います。とりあえず経済指標はチェックしておこうと思ってますが。




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