政策金利と株式リターン

2017年06月13日

アメリカの政策金利と株式リターンについてです。

〇 アメリカの政策金利

アメリカの政策金利はかつては公定歩合でしたが現在はFF金利が使われています。公定歩合からFFレートに移行した正確な時期はわかりませんでした。

公定歩合とFFターゲットレートのデータは FREDのEconomic Data からダウンロードできます。
この記事では2つのレートが6%で重なる1991年3月を基準に公定歩合とFFレートとつないでいます。
また、2008年12月以降のFFターゲットレートは上限-下限が発表されていますがこの記事では上限値を使っています。

公定歩合とFFターゲットレートを比較したのがこちらのグラフです。初期のFFターゲットレートはギザギザで波が荒いです。



1991年3月で両者をつないだデータを使って利上げ期間と利下げ期間をわけると下表のようになります。
ちなみに、利上げ期間は利下げ期間の後に初めて利上げが起こり次に利下げが起こるまでの期間、利下げ期間は利上げ期間の後に初めて利下げが起こり次に利上げが起こるまでの期間とします。



〇 政策金利と実質S&P500のチャート

まずは両者の動きをざっくり見るために政策金利と株価をチャートにしてみます。
政策金利は上に書いたように公定歩合とFFターゲットレートをつないだもの、株価はロバート・シラー教授のHPよりダウンロードした実質S&P500です。灰色のシャドーは景気後退の時期です。



ざっくり見た感じでは、50年~60年代後半までは政策金利と株価がそろって上昇、それ以後95年頃までは政策金利と株価は逆の動き、2000年~2010年の期間は両社はほぼ同じように動いています。一目でわかる一貫したパターンはないかなという感じです。


〇 利上げ・利下げ期間の株式リターン

次に利上げ期間、利下げ期間にわけて株式リターンを見てみます。

上のグラフは17回あった利上げ期間のリターン、下のグラフは16回あった利下げ期間のリターンを年率換算したものです。グラフのX軸は利上げ・利下げが開始された年で、一番右の「平均」が利上げ・利下げ全期間の年率換算リターンです。





一目瞭然ですが、リターンは利下げ期間が圧倒的に良いです。
1950年1月~2017年5月までの期間では、利上げ期間の年率リターンが2.7%(実質は-1.2%)だったのに対して、利下げ期間の年率リターンは11.6%(実質は8.7%)もありました。

ただし、2000年以降は事情が変わり、利上げ期間が堅調なプラスリターンになっているのに対して、利下げ期間のリターンは悪化しています。

ちなみに米国の過去の利上げ局面から読み取る!今から使える戦略とはというレポートでは、利下げ・利上げ期間に加えて変化がない時期も調べています(期間は1971年1月から2015年2月まで)。
そちらも全体的には利下げ期間のリターンが良い傾向が出ていますが、1991年以降は利下げ期間のリターンはマイナスです。




〇 利下げ・利上げ開始前後の株価

金融政策が転換し、利下げ・利上げが開始された月から前後1年間の株価(名目)の値動きです。1950年以降の平均値(利上げ17回、利下げ16回)を集計しています。
X軸のtは利下げ・利上げ月、-1は1か月前、+1は1か月後ということです。棒グラフは単月の損益、線は累積の損益曲線になります。





利下げ開始は明確な強気シグナルになっており、利下げ開始後1年間のリターンは約15%になります。

一方で利上げを開始した翌月のリターンははっきりと悪くなっています。ただ、3ヶ月後にはプラスに戻り、以後もプラスのリターンが続いています。利上げ開始前と開始後を比べると、一時的な株価の落ち込みはありますが上昇トレンドは途切れていません。


〇 利上げ・利下げの月と株式リターン

上ては金融政策が転換した月だけを対象にしましたが、次は利上げ・利下げがあった月すべてを集計してみます。利上げ・利下げの月とそれ以後6か月の累積リターン(名目)です。



ここでも利下げ後のリターンが良いです。一方で利上げ後の株価は低迷していますががそれでもマイナスリターンにはなっていません。


〇 感想

全体的に見れば利下げは株価にプラスという傾向です。
ただ、ITバブルからリーマンショックの期間はその関係が完全に逆転してしまいました。ITバブルのときはPERが高すぎたこと、リーマンショックのときは金利を下げても景気をコントロールできなかったことが理由だと思います。
金融政策は重要なシグナルではありますが、その神通力はFRBへの信頼感や実際に景気がコントロールできるかといった要因に左右されるのではないかと思います。

あと利上げの悪影響ですが、確かに株価にマイナスの影響は見られるものの、全体でみれば大きくマイナスになるほどの強いインパクトはなさそうです。単純に利上げだけを見てマーケットタイミングを測るのはなかなか難しいかなと感じました。




最近の記事