景気と株価リターン

2016年03月14日

景気が良いと株価は上がり、景気が悪くなると株価は下がる、当然の事実のように思えますが、実際にそのような動きになっているのでしょうか。景気循環と株価リターンを見てみます。


○ 株価と景気循環のチャート

まずはざっくりとチャートを見てみます。名目株価だと過去の数字が小さくなりすぎて変動がわかりにくいので、実質株価と景気拡張期・後退期のグラフです。灰色のシャドーが景気後退期に当たります。
データですが、日本の景気循環は内閣府の景気基準日付で株価は日経平均株価の月足を、米国の景気循環はNBERのUS Business Cycle Expansions and Contractionsで株価はS&P500の月足を使っています。両国ともに消費者物価指数で実質株価に調整しています。





アメリカは比較的景気循環と株価が一致しているように見えます。一方で日本はリセッションの数が多いため、チャートを見ただけでは判断しにくいです。

○ 景気拡張期と景気後退期のリターン

景気拡張期と後退期の日経平均とS&P500のリターンを見てみます。
なお月足株価のため株価リターンは終値を使って計算しています。例えば、山が2008年2月で谷が2009年3月のリセッション期間のリターンは、2008年2月終値~2009年3月終値のリターンとしています。

まずは日経平均株価の景気拡張期のリターンです(拡張期の長さはバラバラなのでリターンは単純に比較できません)。
景気拡張期には名目リターンのマイナスが1回、実質リターンのマイナスが3回ありました。ただ、大きなマイナスは1962年10月~1964年10月の実質リターン-16%だけです。バブル崩壊後の90年代の成績は悪いですが、景気拡張期に大きなマイナスは起きていません。
一番右型の年率換算は景気拡張の累積リターンを年率換算したもので、名目13.1%・実質9.9%でした。



景気後退期です。
バブル前は景気後退期でもマイナスリターンになるのは半々くらいの確率でしたが、バブル以後の5回のリセッションはすべてマイナスのリターンです。マイナス幅も2012年のリセッションを除いて大きいです。累積リターンの年率換算は名目-3.2%・実質-6.5%でした。



米国の場合は、景気拡張期が名目8.7%・実質4.8%、景気後退期が名目-0.2%・実質-4.0%の年率換算リターンとなりました。日本と同じく景気拡張期の方がリターンは高いのですが、景気後退期でも名目株価のリターンは12回のうち7回がプラスで、-10%を超える下落も2回だけです。比較的底堅いです。





なお、景気拡張期のリターンが日経平均に比べて低いのは、1940年代のマイナスリターンが含まれていること(日経は1951年10月以降のデータ)、日本に比べて景気拡張期が長いことや景気後退期の落ち込みが小さいこと、などが原因だと思います。


○ 景気の山と谷周辺の株価の値動き

次に景気のピークとボトム周辺で株価がどのように動いているのかを見てみます。

下のグラフは景気のピーク周辺(15回)の日経平均株価(名目)の平均月次リターンと累積リターンです。X軸の0が谷と山の月に当たり、-1はその1か月前の月の株価のリターンという意味です。

株価は景気の谷に入ったときにやや低迷している印象があります。ただ、明確な傾向というわけではないです。



一方でボトム周辺ははっきりしています。景気が底を打つ3か月前程から3カ月後までの6か月に非常に大きなプラスのリターンとなっており、それ以後も1年後まで継続的なプラスリターンが続いています。累積リターンは30~40%と非常に大きく、この時期に株に投資していないのは大きな機会損失となります。



米国では、景気の山付近で株価はやや大きく落ちいています。下落幅は6~7%です。ただ、半年を過ぎたあたりから株価は回復に向かっています。短いリセッションの回復期間が入ってくるからかもしれません。



一方で景気の谷では日本ほどではないですがはっきりしたプラスリターンです。谷の3カ月前から6か月間のリターンが高く、その後もしばらく良好な株価推移となっています。累積リターンはボトム前後の6か月が20%ほど、それ以後を含めると25%くらいのリターンです。




○ GDP成長率と株価

これまでは景気拡張期・後退期で分けて株価リターンを見ていましたが、今度は実質GDP成長率と株価の変動を四半期ベースで比べてみます。

下のグラフは実質GDP成長率と日経平均のリターン(名目値)の散布図です。左は1957年~2015年の期間、右は2000年から2015年の期間です。相関係数は0.16と0.26で、2000年以降に弱い相関があるといった程度です。



一般に株価は景気に先行すると言われるので、実質GDP成長率と1四半期前・2四半期前の株価リターンの相関も見てみます。また、名目だけでなく実質株価と実質GDPも比べてみます。

名目株価リターン実質株価リターン
同四半期1四半期前2四半期前同四半期1四半期前2四半期前
実質GDP成長率0.160.210.230.130.140.19
 2000年以降0.260.290.140.270.310.13

この期間で実質GDP成長率と1番相関が高いのは2四半期前の名目株価のリターンでした。また、2000年以降では1四半期前の実質株価のリターンが一番高い数字です。ただ、それらも弱いレベルにすぎません。

次に1951年~2015年の米国のS&P500と実質GDP成長率の比較です。
数字は全体的に日本よりも高くなっていますが、相関の強さは日本と同じく弱いです。ただ、2000年以降は実質GDP成長率と株価の動きの連動が高くなっています。この期間は景気拡張期・後退期と株価の値動きがかなり一致していたのでこういう数字になるのかなと思います。

名目株価リターン実質株価リターン
同四半期1四半期前2四半期前同四半期1四半期前2四半期前
実質GDP成長率0.100.240.320.110.250.32
 2000年以降0.420.330.280.410.330.28


○ 感想

2000年以降はITバブル崩壊とサブプライムショックという2つのビッグイベントが起こり、景気循環と株価の動きが強く連動しました。しかし、今後もこのようにはっきりした動きが続くとは限りません。PERが異常に高い値となったITバブルや戦後最大の景気後退となったサブプライムショックはまれな出来事だったと考える方が妥当だと思います。
2000年以前も含めた全体で見ると、株価と景気循環に関連はあるけれどそれほど強くないのかなという印象です。

景気後退を予想するのはとても難しいこと、また正確に予想できたとしても株価が下落するとは限らないこと、リターンの高い景気のボトムで投資していないリスク、を考えるとリセッションを予想してマーケットタイミングを取るのはあまり割の良い賭けではないのかなというのが感想です。

ただし、実際にできるかどうかは別ですが、経済危機レベルのリセッションを予想するのは試してみる価値がある気がします。
60年代~80年代の米国のインフレ危機、90年代の日本の金融危機、2000年のITバブル、2007年からのサブプライム危機など、深刻なリセッション時には株価が大きく下落していることが多いです。特に90年以降の日本のリセッション時のリターンひどさを見ると、この期間をなんとか避けたいとどうしても考えてしまいます。




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