雇用者報酬

2014年10月08日

6-8月の実質雇用者報酬はプラスになっていると安倍首相が言っているというニュースを見ました。

BRIEF-実質雇用者報酬は消費増税分除くと6─8月プラス、アベノミクスは機能=安倍首相

安倍晋三首相は6日午前の衆院予算委員会で、実質雇用者報酬は消費増税分を除くと6─8月はプラスとなっており、アベノミクスは機能しているとの認識を示した。小沢鋭仁委員(維新の党)の質問に答えた。



家計の所得を見る統計としては、家計調査の実収入や毎月勤労統計の賃金指数がありますが、これらは就業者数を考慮していません。1人あたりの賃金が減っても、失業率が下がり働いている人が増えれば、全体として賃金が増えるということも起こります。
安倍首相のブレーンの浜田宏一・内閣官房参与はこんなことを言っています。

物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。



では、実際に雇用者報酬の推移はどうなっているのでしょう。
雇用者報酬はGDPの項目として発表されています。これを見ると、名目値は順調に上がっているものの、実質値は2013年1-3月期をピークに右下がりとなっています。特に直近の4-6月期は2.3%減と大きなマイナスです。



ただ、この統計は四半期ごとの発表なので、首相の言う数字(6-8月期の雇用者報酬)ではなさそうです。

ネットを検索してみたところ月次の雇用者報酬という統計はなく、レポートなどで見る数字は賃金と雇用者数の2つの統計から計算しているようです。

例えば、下のピークアウトの可能性が高まる雇用というレポートに掲載されていたグラフは、出所に「労働力調査」と「毎月勤労統計」とあり、この2つの統計から数字を計算していると思われます。




もうちょっと長期の数字を見るために、毎月勤労統計の賃金指数(現金給与総額)と常時雇用指数から雇用者報酬を計算してみます。どちらも5人以上・季節調整なしの数字を使います。

上のグラフは91年~14年まで、下のグラフは09年~14年です。
13年中頃から名目雇用者報酬の伸びが加速しているのがわかります。しかし、物価の上昇によって実質ではマイナス圏に低迷しており、名目と実質のかい離が激しくなっています。






次のグラフは、労働力調査の就業者数を使った数字と毎月勤労統計の常時雇用者数を使った数字の比較です。賃金はいずれも毎月勤労統計の実質賃金指数です。
両者の動きはほぼ同じですが、労働力調査を使った数字の方がマイナス寄りになっています。




どの統計を使うかによって数字は多少変わりますが、アベノミクス以降で実質雇用者報酬が劇的に改善したという証拠はないと思います。13年下半期から14年にかけては、小幅ながらマイナスが続いているという状況ではないでしょうか。
インフレによって実質賃金が下がるのは仕方ないのかもしれません。しかし、それを打ち消せるほど雇用が増えてこないのは問題だと思います。




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