アセットアロケーションについての話

2014年10月27日

アセットアロケーションについて書かれた文章をいくつか読みました。
思ったより難しい内容が多く、英語力の不足から理解しにくい部分もありました。また、この種の細かい話がどこまで重要なのかなと疑問に思うところもあります。でもせっかく読んだのでとりあえず僕が理解したことを書いてみます。

まずアセットアロケーションについての議論の流れについては、アセットアロケーションはどれほど重要か? 20年の議論の軌跡がわかりやすいと思います。

日本語で読める解説は以下のページが見つかりました。
アセット・アロケーションの重要性とリバランス(上)
アセット・アロケーションの誤解を解く
ポリシー・アセットアロケーションの説明力

上でも書かれてていますが、「アセットアロケーションでX割決まる」とか「アセットアロケーションによってリターンのXX%を説明できる」とあるとき、いくつか異なる意味があります。
Does asset allocation policy explain 40, 90, 100 percent of performance? はこれを、アセットアロケーションはファンドのリターンの変化量の90%を説明し、ファンド間のリターンの差異の40%を説明し、ファンドのリターンの水準の100%以上を説明する、とまとめています。

our analysis shows that asset allocation explains about 90 percent of the variability of a fund's returns over time but it explains only about 40 percent of the variation of returns among funds. Furthermore, on average across funds, asset allocation policy explains a little more than 100 percent of the level of returns.



① リターンの変化量

最初にアセットアロケーションの重要性が説かれた論文で発表された93.6%という数字がこれです。
月次もしくは四半期という一定の期間において、ファンドの値動きがどれだけアセットアロケーションで説明できるかということです。ファンドの実際のリターンとそのファンドのポリシーアセットアロケーションのリターンを比べます。

ポリシーアセットアロケーションとは、そのファンドの期間を通した平均的なアセットアロケーションの比率のことだと思います(マーケットタイミングを含めないので静的な値)。多くのレポートでは return based style analysisという統計手法で計算していると書かれていますが、この手法がどんなものかは僕は理解していません。

下の図は、Does asset allocation policy explain 40, 90, 100 percent of performance? に掲載されていたあるファンドの月次リターンとそのファンドのポリシーアセットアロケーションの月次リターンの散布図で、R2は0.9と高い値となっています。このような分析を対象とするファンドすべてに行うことで、全体としての数字を求めます。

allocation (9)

リターンの変化量の説明力はレポートによってややばらつきがありますが、70%~95%と高い値がほとんどです。
ただし、同レポートの米国ミューチュアルファンドの分析では、比較対象をポリシーアセットアロケーションからS&P500に変えても依然として高い説明力(87.6%→81.9%)を示すことから、この数字は個々のアセットアロケーションの違いよりもマーケット全体の影響を受けているのではないかという指摘がされています。この話は後に The Equal Importance of Asset Allocation and Active Management で詳しく説明されます。


② ファンド間のリターン格差の説明力

複数のファンドのリターンの違いがどの程度アセットアロケーションで説明できるかということです。
ファンドのリターンとそのファンドのポリシーアセットアロケーションのリターンを比べるのは①と同じですが、①がひとつのファンドを時系列に分析するのに対して、こちらは一定の期間における複数のファンドを横断的に分析します。

同じく Does asset allocation policy explain 40, 90, 100 percent of performance? に掲載されていた図です。縦軸が実際のファンドの10年間のリターン、横軸がポリシーアセットアロケーションの10年間のリターンで、1つの点が1つのファンドを表しています。こちらのR2は0.4と①に比べて低い値です。

allocation (11)

この数字はレポートによってばらつきが大きく18%だったり69%だったりしています。
説明力の違いを左右する要因としては、ファンドのアクティブ運用の程度や対象時期の違い(時期によってR2のブレが大きい)などがあります。
アクティブ運用の程度は、年金ファンドのように広く分散投資されてアクティブ運用も限定的であるほどアセットアロケーションの説明力が高くなります。同レポートには、アクティブ運用の割合を半分にすると説明力は81%に高まり、1.5倍にすると14%に落ちるというグラフが掲載されています。

allocation (12)


③ リターンの水準

ファンドのリターンのうち、アセットアロケーションの貢献度がどれだけあったかということです。最終的なファンドのリターンと、そのファンドのポリシーアセットアロケーションのリターンを比べることで求めます。
例えばこの数字が100%の場合、あるファンドが5年間で10%値上がりしたとき、そのファンドのポリシーアセットアロケーションのリターンも10%になるということです。

リターン水準の説明力はかなり安定しており、ほぼすべてのレポートで100%を超える値になっています。
100%を超えるということは、アセットアロケーション以外の要因(マーケットタイミングや銘柄選択)であるアクティブリターンが平均するとマイナスになってしまうということです。


ところで不思議に思ったのは、短期的変動の9割近くと長期的リターンの100%超がアセットアロケーションによって決まるのに、なぜファンド間のリターンの差異がかなり低い割合(イボットソンの場合は4割)しか説明できないのか??という点でした。

The Asset Allocation debate には次のグラフが掲載されており、短期的な変動と中長期的リターンが一致しないことが説明されています。実際のファンドとポリシーアセットアロケーションはかなり似た動きをしているため短期的変動の多くはアセットアロケーションで説明できるものの、トータルのリターンはまったく違った数字が出てくるというわけです。

allocation (1)

しかし、同レポートの米国バランスファンドを使った分析結果は、短期的変動の説明力81.6%に対して、ファンド間リターンの説明力はたったの18.9%です。あまりにも数値の違いが大きすぎるのではないかと・・・。


この疑問については、The Equal Importance of Asset Allocation and Active Management が明確な回答をしています。
それによると、①のリターンの変化量の説明力にはマーケットそのものの動きが含まれているのに対し、②のファンド間のリターンの差異の説明力ではマーケットの動きが除去されているとのことです(ファンド間を横断的に比較するときマーケットの動きは自然に除去される)。よって①からマーケットの動きを除くとアセットアロケーションの説明力はもっと低くなり、②と同じような数字になります。下のグラフは両者の比較です。

allocation (8)

では、マーケットの動きとそれを除いたアセットアロケーションを分けたとき、両者の値がどの程度なのかというのが次のグラフです。左の2本がブリンソンのBHB studyのグラフ、右の2本が彼らの分析した株式ファンドとバランスファンドのグラフです。BHB studyではマーケットの動きが考慮されていませんが、彼らの分析ではアセットアロケーションをマーケットの動きとそれ以外のアセットアロケーションの部分に分けています。

これによるとUS株ファンドでは、マーケットの動きが83%と全体の大部分を説明し、それを除いたアセットアロケーションの説明力は18%でアクティブ運用の15%と同じくらいの数字となります(Interaction effectが-16%)。
この結果から、マーケットの動きを除いたアセットアロケーションとアクティブ運用は同じくらいに重要だという結論を彼らは下しています。

allocation (6)

※ただし、彼らの分析では、各ファンドをUS株ファンド・バランスファンド・海外株ファンドの3つのカテゴリーに分け、それぞれのカテゴリーに対して別々のベンチマークを使用しています。仮にカテゴリーを無くしてベンチマークをひとつにした場合、(直感的には)マーケットの動きの説明力が減り、アセットアロケーションの説明力が増える気がします。どこまでがマーケットの動きで、どこからがアセットアロケーションの範囲なのかを厳密に分けるのは難しい気がします




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