株式投資から期待できる利益

2015年02月06日

株を買うににあたって一番気になる「株は上がるのか?」「上がるとすればどれくらい上がるのか?」という話です。


① 過去114年のデータ

クレディスイスの Global Investment Returns Yearbook 2014 のなかに21か国と世界&ヨーロッパ地域を対象とした超長期(1900年~2013年)のデータが公開されています。
下のグラフはそこから抜粋した1900~2013年と1964~2013年の期間における世界各国のインフレ調整後の株式の年率リターンです。



これによると、過去50年の株式リターンは、最低のイタリアが0.6%、最高のスウェーデンが8.5%で、世界全体では5.4%でした。日本は4.3%で下から4番目、アメリカは5.8%となっています。

過去114年で見ると、世界大戦や恐慌が起きたこともあり多くの国でリターンは落ちます。ただ、世界全体では5.2%と過去50年とそれほど変わらない数値となっています(理由はわかりませんが、為替レートや世界指数のウェイトが影響しているのかもしれません)。

このデータからざっくり言うと、過去50年は4~6%前後、過去114年は3~6%前後のリターンの国が多かったという感じです。


② なぜ株価は上がるのか?

長期的に見ると株価は値上がりしています。ではなぜ株は上がるのでしょうか?
一番わかりやすいのは配当が増えているからという答えです。

下のグラフはS&P500の株価と配当の長期チャートですが(話をわかりやすくするために両者ともに名目値で表示しています)、1900年1月に0.22ドルだった配当が2014年1月に35ドルまで増加しています。1900年1月の株価は6.1ドルだったので、仮に株価がまったく値上がりしなかった場合、2014年1月の配当利回りは580%というとんでもない数字になってしまいます。当然ながらこんなことは起きず、株価は配当の増加に従って値上がりしています。


※データはロバートシラー教授のHPより取得。

配当が右肩上がりに増えている理由は会社の利益の増加です。
下のグラフはS&Pの1株あたりの利益と配当の長期チャートです。一時的に利益が配当を下回ることはあるもののほとんどの期間で利益は配当を上回っていることがわかります。



次になぜ会社の利益が増えているのかという話ですが、それは経済が成長しているからという答えになりそうです。
下のグラフは Earnings Growth: The Two Percent Dilution に掲載されていた米国のGDPと企業利益の推移(1929年~2000年)ですが、両者が並行して右肩上がりで増加していることがわかります。



というわけで、なぜ株が上がるのかという疑問に対する答えは、経済が成長することで会社の利益や配当が増えて、それに伴って株価も上がるということになるかと思います。


③ 株式投資からどれくらいのリターンが期待できるか?

過去のデータを見ることで株がどれだけ値上がりしたかを知ることはできます。しかし今後もそのリターンが続く保証はありません。そこで将来のリターンを予想するために、過去の株式リターンをもう少し詳しく見てみます。

株式リターンは、配当、配当成長率、配当利回りの変化(市場の評価)、という3つの要素に分解することができます。
この数字は1900~2013年の各国の実質株式リターンを分解した数字が Global Investment Returns Yearbook 2014 に掲載されていたので、それをグラフ化してみます。



まずリターンの大部分を配当が占めていることがわかります。世界全体では実質株式リターン4.54%のうち実に96%に当たる4.35%が配当によるものです。

配当の実質成長率は12か国がマイナスで世界全体でもマイナス0.11%の成長率となっています。プラスの国でも1%前後の国が多いです。配当がほとんど成長していないのはちょっと意外です。

ただ、配当成長率については少し注意が必要かもしれません。
まずこのデータには20世紀前半の混乱期が含まれていることです。戦後に限ればの成長率はもう少し高いと思われます。
また、企業が稼いだ利益のうちどれだけ配当にまわすかという配当性向の変化もあります。例えばアメリカの場合、下のグラフのように20世紀を通して配当性向は低下しています。配当を出さず内部留保を優先した企業の利益成長率は配当成長率よりも高い可能性があります。



最後に配当利回りの変化ですが、世界全体ではマイナス0.29%と20世紀を通して低下しています。配当利回りの低下は、配当が変わらなければ株価の上昇を意味します。配当成長率は-0.11%でしたが、配当利回りが年0.29%下がったために世界の実質株価は年0.18%上昇しています。

以上のように、株式リターンは配当&成長率&市場の評価という3要素に分解できるのですが、上に書いたように配当成長率は配当性向に影響を受けてしまうため扱いが難しいです。そこで配当成長率の代わりに利益成長率を使い、配当&1株あたりの利益成長率&PERの変化という公式で将来の株式リターンを考えてみます。

① 配当利回り

日経新聞によると現在の日経平均の配当利回りは1.31%です。
S&PのHPのデータを使うとS&P500の現在の配当利回りは1.91%です。


② 一株利益成長率

アメリカの話ですが、上場企業の1株あたり利益成長率は、GDPの伸びを下回る一方で1人あたりGDP成長率に近い数字で推移しているというグラフが Earnings Growth: The Two Percent Dilution に掲載されています。



シラー教授のデータを使って1950年以降の数字を見ても、実質GDP成長率3.2%に対して、実質の1株利益成長率は2.3%・実質配当成長率は1.8%となり、利益や配当の成長率は経済成長率に届いていません(ただし、この種の数字は起点と終点の株価に結果が大きく左右されてしまいます)。
経験則的には上場企業の1株あたりの利益成長率はGDP成長率を1~2%ほど下回るという感じだと思います。



実質GDP成長率は、世界経済のネタ帳から数字をとって計算したところ、1980年~2013年の期間ではアメリカ2.7%・日本2.1%、2000年~2013年の期間ではアメリカ1.9%・日本0.9%でした。
依然として人口が増加しているアメリカの実質成長率を従来どおりの2~3%、人口減少中の日本の実質成長率を0~1%と仮定すると、1株あたりの実質利益成長率の予想はアメリカで0~2%、日本は-2~0%という数字となります。


③PERの変化

現時点の日経平均の予想PERは15.6倍、S&P500は17.3倍です。
過去の推移を見ると、米国の平均は16倍程度で現在の実績PERはやや割高な位置にいます(1年EPSを使った予想PERは平均程度になります)。日本の場合は1980年頃までは15~20倍程度でしたが、その後はバブルとその後遺症でぐちゃぐちゃな数字となっており過去との比較が難しいです。しかし、現在の予想PER15~16倍は世界標準の数字です。
PERはおおむね平均的な数字なので、これは今後も変化しないと考えます。






④期待できる収益

以上の3つの数字から考えると、アメリカは配当利回り1.91%+利益成長率0~2%+PERの変化0%=1.9~3.9%、日本は配当利回り1.31%+利益成長率-2~0%+PERの変化0%=-0.7~1.3%となります。

自分で計算しておいて何ですが、過去の数字と比較すると正直いって低すぎる気がします。
数字が非常に低くなってしまった一番の原因は、歴史的にリターンの大部分を占めきた配当利回りが2%にも満たないためです。これをカバーするには高い利益成長かPERの上昇が必要になりますが、現在のPERは歴史的に見て平均もしくは高いレベルにあるためバリュエーションの上昇は難しいと思います。
そうなると期待できるのは1株利益の成長率ですが、アメリカの場合(配当性向が低下気味にもかかわらず)成長率が加速している傾向は見られません。

09 US eps成長率 Grobal investment year book
※グラフはGlobal Investment Returns Yearbook 2009より

そんなわけで、低い配当利回り&過去と変わらない利益成長のトレンド&標準的なPERという前提条件で考えると、今後の株式投資のリターンはいまいち冴えないものになるのかなという感想です。特に人口減少で経済成長の低下する日本の場合は話が深刻になりそうな気がしてます。





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