投資家が大切にしたいたった3つの疑問

2015年06月26日



PSRの発案者として有名なケン・フィッシャーの本です。
ケン・フィッシャーは成長株への長期投資で有名なフィリップ・フィッシャーの息子ですが、彼自身長期にわたり資産運用の世界で平均を上回る成績を残してきたそうです。また、自力で築き上げた資産によりフォーブス誌の「最も裕福な米国人400人」に入っているとのこと。

この本の主題はたったひとつ、株式市場で勝つには「他人の知らないことで、あなたが知っていることは何か?-自分だけの優位性とは何か?」を知らなければならないというものです。
フィッシャーによると、相場は現在知られている情報をすべて織り込むため他人が知っている情報をもとに売買をしても勝つことはできないそうです。効率的市場仮説ですね。しかし、彼はそこで話を終わりにせず、市場にはまだまだ知られていないことが多いため、それを知ることで平均を上回る成績をあげることができるという立場をとります。
この他人が知らないことを知るために、題名に書かれている3つの疑問を使おうというのが彼の主張です。

① 実際には間違っているが、私が信じているものは何か?
② あなたが見抜けても、他人には見抜けないものは何か?
③ 私の脳は、自分を騙して何をしようとしているのか。自分を見失わせるのか?

また、いったん機能する手法を見つけてもそれで終わりではありません。
フィッシャーは、市場の持つ効率性という特徴からいったん機能する手法もそれが広く知られてしまうと有効性を失ってしまうと言います。したがって長期にわたり市場を上回る成績を残したいのであれば、継続的に検証をして革新を進めていかなければならないそうです。

市場の効率性を訴えてインデックスファンドを勧める本や、市場の非効率を訴えてファンダメンタル投資やテクニカル分析を勧める本は多いですが、全体として市場は効率的だが非効率を発見すれば勝つことができる(ただしその優位性もみんなが知ると消えてしまう)というスタンスの本は珍しいと思いました。個人的にはこの見方が現実世界をいちばんうまく説明しているように思えます。

問題は書き方にちょっとクセが強いかなと感じた点です。
この本は基本的にデータを使って客観的に検証すべしというスタンスで書かれていますが、少ないデータをもとに断定口調で言い切っていたり、検証の規準が緩く思えるものが多かったです。
たとえば、長期の相関が多少あることを著者も認めているのにPERの有効性はまったくないと断定していたり、それほど有効に見えない1枚のグラフを掲載しただけで株式益回りと債券利回りの比較が有効だと言い切っていたりします。また、著者が有効だとした指標が機能しないときはそのときは相場に織り込まれていたと(正しいのかもしれませんが)検証不可能なことを書いていたりします。

そんなわけで、この本の基本的な原則論はすごくためになりましたが、個々の内容についてはどれだけ信頼していいかちょっと判断しにくかったです。

■取り上げている話の例

本書は700ページを超える分厚い本ですが、三つの疑問を使って他人が知らないことを見つけていく実例に大部分のページが割かれています。

・PERはリスクやリターンと関係ない。
・株式益回りと債券利回りの比較は有効。
・財政赤字は株式にとっては好都合。
・広く話題になったニュースは相場に織り込まれており打撃にならない。Y2K、鳥インフルエンザ、etc
・FF金利の変動と株価の間には信頼性のある関係が何もない。
・昔はイールドカーブは信頼性があったが、現在は1国ではなく世界(GDP加重)のイールドカーブが重要。
・世界のイールドカーブが大きく傾くとバリュー株が優位、カーブが横ばいになるとグロース株が優位。
・大統領任期サイクル。3年目が最も良い年。相場リスクは前半2年に集中する傾向がある。
・自信過剰、確証バイアス、反省回避などの行動ファイナンス。
・プロの予想のコンセンサスと実際のリターンは乖離することが多かった。
・石油と株式市場に逆相関の関係はない。影響はゼロ。
・5月売りに有効性はない。5-10月のリターンは11-4月のリターンより低かったがプラスである。現金を抱えて利益を少なくしろということか?
・曜日・月・季節などに関する神話には信頼性がない。
・米国は過剰負債ではなく負債の足りない国。
・貿易赤字や経常赤字は悪いものではない。
・金は株式のヘッジにはならない。
・貿易収支や経常収支は為替レートとは無関係。
・金利差と為替レートにはある程度の信頼性がある(あった)。


■ベンチマーク

フィッシャーは自分のベンチマークを設定し、そのベンチマークとの相対リターンを目標にすべしと言っています。
自分だけが知っていることがなければベンチマークどおりに投資して、ベンチマークリスクを取るのは他人が知らない何かを知っているときだけにすべしとのことです。

また、ベンチマークリスクを取るときでも極端に走ってはならないと警告しています。自分だけが知っていると思ったことも間違っている可能性は常にあるため、過剰なベンチマークリスクを取る投資家は自信過剰に病んでいるとの指摘です。フィッシャー自身もITバブルがはじけると確信していたにもかかわらずIT株を少しの割合で持ち続けたそうです。

なお、長期的にはどのベンチマークもほとんど同じようなリターンとなることから、きちんと作られたものであればベンチマークはどれでも良いそうです。ただし、(リターンが同じであるため)ボラティリティが低いベンチマークが賢い選択になることから、最も幅広く相場が反映されている全世界を対象とした指数がベストだとしています。


どこかの業種への比率を過剰に大きくしたり小さくしたりする投資家は、疑問三を使っていないのだ。自信過剰に病んでいるのであり(そのほかの間違いは別として)、自分の売買に間違いがある可能性に気づいていないのである。
私はこの考え方に従い、ITバブルがはじける原因について、他人が知らなくとも自分の知っていることがあると確信していたにもかかわらず、00年でもIT株を少しの割合で持ち続けた。自分の売買判断を実行する心は決まっていたが、自分が間違っている可能性もあると承知していたので、極端な賭けには出たくなかったのだ。自分のベンチマークを超える大きな売買をして間違っていた場合、そうしなかったら得られていたはずのベンチマークどおりの成績が上げられない。
〇〇年にIT株の比率を大きくしていた投資家は、判断を間違えており、代償を払うこととなった。〇三年に岩陰に隠れていた投資家も、判断を誤り、IT株やそのほかの相場上昇に乗れなかった。いずれにせよベンチマークから離れた売買をして、間違っていたために相場の後塵を拝したのである。
ベンチマークからの遅れを取り戻すのは非常に困難である。そして治療法は単純である。もし他人の知らないことを知っていると思うものがなければ、ただ自分のベンチマークに従うのだ。
他人の知らない何かを知っていると思えばそれに賭ける。だが、あまり極端に走ってはならない。なぜなら、それでも間違っている可能性はあるからである。そして実際に間違っているときもある。


■マーケットタイミング

まず今後1年程度の株価の動きを、大幅上昇、小幅上昇、小幅下落、大幅下落の4つのシナリオで予測します。このうち大幅上昇、小幅上昇、小幅下落のシナリオでは100%株式投資で、マーケットタイミングを使ってベンチマークリスクを負うのは大幅下落のシナリオのみにすべきとのことです。

小幅下落でも100%株式投資するのは、小幅下落と小幅上昇の数%の差はほんのちょっとした偶然のブレでしかないからとの理由です。相場はマイナスよりもプラスの年が多いため、小幅なマイナスを避けようとして大幅上昇の可能性を捨てるのはリスクが大きすぎるとのことです。
フィッシャーによれば、「小幅安の年を避けようとすることは、脳が過剰な自信に支配されている完壁な例である」だそうです。

大幅下落のシナリオだけは、相対的なリターンではなく絶対的なリターンに集中します。しかし、大幅下落を避けるために現金化するのはベンチマークリスクが非常に大きいので、他人の知らない何かを自分だけが知っているときだけ行うべきだとのことです。
ちなみに大幅下落の年は非常に珍しく、80年以降では四回しかなかったそうです。よって20年間に3~4回以上も弱気の姿勢をとっているとすればそれはやりすぎであるとの指摘です。

・調整とは短期的な10~20%の急激な下げとその後の急上昇。平均的には1~2年に一度見られる。急速に上下する中で撤収と復帰の正しい判断をしなければならないため、調整には関わり合いにならないほうが良い。

・強気相場の存続期間は大きく幅があるのに対して、ほとんどの弱気相場はおよそ1年から18カ月間で終わる。弱気を長く維持するほど、株式市場に復帰しにくくなり、ほぼ常に現れる急上昇の局面を逃してしまうことになるかもしれない。この代償は非常に高くつく。

・弱気相場の始まりは急激ではない。下げが急激になるのは後半にかけてである。大雑把な一般論であるが、弱気相場の損失のおよそ3分の2は弱気相場の終盤3分の1にならないと起こらない。

・ひとつの強気相場に適切な長さなど存在しない。強気相場はすべてそれぞれの理由で終わる。しかし寿命ではない。


■銘柄選択

銘柄選びにはたいした影響力がないとのことです。
リターンの大部分は銘柄選びではなく資産配分からもたらされることから、銘柄選びよりももっと重要なこと(株式を持つか債券を持つか、どのセクターの株式をもつか、など)に時間を割けと言っています。


まず銘柄選びにはたいした影響力がない。数々の学術論文が書かれているが、学者間の一般的統一見解では「リターンの大部分は銘柄選びではなく資産配分からもたらされる」とされている。ある年に株式を持つか、債券を持つか、それとも現金で持つか、それからどの種類を持つかの決定である。
ちなみに学者たちは、それがいくらくらいを意味するのかという、つまらない議論をしている。ある研究によると、リターンの90%以上が資産配分からもたらされるとされ、また、それよりも少ないとする研究もある。私はそのようなつまらない議論はしない。「大部分」で十分だ。


■米国の債務について

1国が持てる負債の量についての記述があります。この話は珍しいのでメモしておきます。現実世界に適用できるかは疑問ですが、ファイナンス的には確かにそうなのかなと思いました。

ファイナンス理論によれば、負債自己資本比率が最適となるのは借入コストと投下資本利益率と等しくなるとき。

米国の借入コストは金利を見ればわかる。米国のすべての負債を全体的に見てみると、平均金利は安全に見積もっても5~6%になるだろう。

米国の投下資本利益率は米国の総所得(GDP)を総資産で割ることで求めることができる。米国のGDPはおよそ13兆ドルであり、米国の総資産111兆ドルで割ると投下資本利益率は12%となる。

米国の総資産利益率は借り入れコストを上回っており、過剰債務ではない。


■抜粋メモ

・投資は技ではない

あなたがほかの投資家よりも頭が良く、賢く、しっかり教育されていたとしても、ファイナンス理論によれば、それだけでは十分といえない。あなたが自分をどれだけ賢いと思っていようとも、一般的に入手可能なニュースや情報だけを頼りに、他人に打ち勝つことができると思っていたとすれば、それは愚か者なのだ。
相場に打ち勝つための唯一の基本は、他人が知らないことを知ることである。


多くの投資家が「大工や医者と同じように、投資も職人技である」という誤った先入観を持っている。


長期的に相場に打ち勝っているのは、ごく少数のプロだけだ。つまり「技」を身につけるだけで十分とはいえない。職人技だけで相場に打ち勝つことはできないのだ。
ファイナンス理論では、技は役に立たないといえるだろう。必要なのは他人が知らないことを知ることだからだ。


金融経済学を専攻する大学生や大学院生は、長年にわたって相場を研究している。彼らは企業の貸借対照表の分析法を学び、リスク計算やシャープレシオや、オシャレで認知度の高いR二乗やCAPM(資本資産価格モデル)なども勉強する。相場の歴史を学び、多様に変遷してきた金融、経済、政治環境に相場がどのように反応してきたかを見てきている。これほどの知識をもってしても、相場に打ち勝つことはできない。博士号を持たない人と、なんら変わらないのだ。


ほとんどのプロが相場に勝てない。これは長きにわたって、しかも何度も何度も証明されてきた事実である。・・・(中略)・・・。
彼らの多くは頭の良い部類の人たちである。少なくとも、私よりも頭が良いのは確かだ。あなたもおそらくかなり頭が良く、私よりもずっと頭が良いはずだ。しかし、投資で私よりもうまくやれるかどうかに、頭の良さは何の関係もない。
頭が良いことや学習をすることは良いことだ。博士号を取るのも悪くない。しかしそれでは不十分である。そして必要でもない。
あなたは、他人が知らない何かを知らなければならないし、それを使うことで相場に勝てるようになる。自分よりも頭の良い人以上に、上手になれるのだ。


いずれにせよ、あなたは選ぴきれないほどある金融関係書のなかから何かを読む。二四時間放送の金融ニュースを見る。高速インターネット接続で迅速に注文を出したり、より多くの情報源にアクセスしたりできる。モーニングスターのような情報源も調べるだろう。追跡している株式に関する検索結果やSEC(米証券取引委員会)の四半期報告書をダウンロードするのも簡単だ。多機能なテクニカル分析ソフトを人に見せびらかすかもしれない。
これほどまで多くの情報や能力がすぐ手の届くところにあるのに、なぜ相場に勝てないのだろうか。あなたのおじいさんの時代には夢にも思わないような、すごい情報と能力を手に入れたというのに。


正しい答えは、技を完璧に習得することではない。他人が知らない何かを知ることである。
投資家がそうしようとしないのは、技に夢中になりすぎているからである。技を習得して資格証明書を手に入れ、他人とほぼ同じようにその技を実行すれば、相場に勝てると思い込んでいる。


投資が技だとすれば、この数十年、相反する技を教える投資本がこれだけたくさん出されるはずがないし、カリスマ指導者や賢者が、セミナーで対立する戦略を盛んに教えることもない。異なる戦略は、たかだか数個だろう。反復可能で、一貫性があるだろう。木工や石造、医療のように習得可能で、ほかの誰かがあなたに教えることができるはずだ。そしてその技をしっかりと次に伝えることができるはずだ。それほど多くの失敗もないだろう。であれば、私の述べていることは時代遅れであり、あなたは本書を購入することもなかっただろう。



・疑問を持つ

他人が知らないことを知るためには、ただ科学者のように考えればよい。つまり何事に対しても新鮮に考え、興味を持ち、心を開くのだ。
科学者として投資に向かうとき、ルール一式を持ってアプローチするのではなく、聞かれた強い好奇心をもってアプローチすべきである。優秀な科学者ならば誰でもするように、あなたも疑問を持つことを学ばなければならない。


投資で成功するためには、自分が知っていると思い込んでいることをすべて問いただす作業が必要になってくる。特に、自分が本当に知っていると信じきっている事柄についてはそうである。


パターンはどこでも発見されるのを待っている。いうまでもなく、多くのものは深い意味がない。しかし私たちが発見していないパターンはたくさんある。今後何十年にもわたり、人類は資本市場で新しい発見をするのだろう。
あなたに見つけられないという理由はない。探しに出てみれば、世の人が気づく前に見つけられるパターンがたくさんあるのだ。そしてあなたにも優位性ができる。それがあなたの売買根拠となるのだ。


好奇心はあなたが持っている武器のなかでも最高のものである。投資でもそうだし、人生でもそうだ。


私はニュートンではないし、ロパート・ノイスでもない。どの基準で見ても素晴らしい天才ではないだろう。しかし、私は疑問を持つことができる。そして、あなただってできる。
疑問を持てば、あなたは素晴らしい天才になり、私が一度も見抜くことができなかったことを見抜くことに成功し、素晴らしい変革主義者になれるかもしれない。
私はこれからも自分の続けていることを続ける。それは人類の進化過程で、現時点で最もわくわくする楽しいことは、以前に一度も開発されたことのない新しいものを開発し、過去の方法論を消滅させることだからである。私たちは間違いを犯すだろう。それは間違いない。しかし、私たちは前進することも間違いない。
あなたも私と同じように、いや、私よりも上手にできるだろう。もしあなたが若ければ、私よりもずっと長い間実践できる。大きな違いを生む可能性がある。


・継続的な革新

当時、私はまだ誰も使っていない方法で株式が過大評価されているか過小評価されているか判断する方法を明らかにし、八四年に『ケン・フイツシャーのPSR株分析』という本で紹介した。ベンジャミン・グレアムも株価と売上の聞には面白い関係がありそうだと偶然指摘したことがあったが、その関連性についての書籍は、私のものが史上初となった。
私はこの仕事を非常に自慢としており、これだけ自慢できるのは小学三年生のときにグアテマラについてのレポートを学校で書いて以来である。しかしそれ以外のことで特に今日注目すべきところはない。単なる思い出である。


人がそれを受け入れ、それが良い理論でおかしくないと思い始めたら、それは機能しなくなる。もう時代遅れだ。見抜くことができないことが広く見抜かれるようになれば、もうそれを捨てる時期であり、新たに見抜くことのできない真実を見抜くのである。


ここで、なぜ私が自分の競争力となる強みを大量生産される書籍で宣伝しているのか不思議に思うだろう。私がPSRについての知識を秘密にしておけば自分の優位性を維持することができたのにと思うかもしれない。
そうではないのだ!自分が持っている強みはどのようなものであれ、一時的なものであることが多い。あなたの背後では、いつも誰かがあなたの発見したことを見つけようとしているのだ。
私は自分が素晴らしいものを発見したと思っている。しかし、何も神秘的なことをしたわけではなく、禁断の数学のような複雑なことをしたわけでもなく、その両方をしたわけでもない。誰も真似できないことをしたわけではないのだ。


ジヤツク・ハフという男性がO六年のウォールストリートジャーナルで、PSRで株式投資のリターンを予測できた驚きを記事にしていた。しかし、このような指標は、一度社会に広まると機能するときもあればしないときも出てくる。ちょっと人が興味を持つ程度だ。同じことがPERや配当利回り、PBRなどについてもいえる。その例を挙げればきりがない。


ある種類の株式が五年にわたり株式市場を上回る値動きをしてきた。圧倒的多数の投資家は、この流行に飛びつき、理由はともあれここ何年もうまくいってきたものに便乗する。ところが、この動きはそれから五年程度の間止まってしまい、その結果、投資家は同じことが二度と起こらないと考えるようになる。
投資家がもう二度と同じことが起こらないと思っているということは、それは再び起こり始める可能性が十分あるということだ。その出来事はもはや相場価格に織り込まれず、認知エラーが原因で単に人の目が向けられなくなる。
これが低PSR、低PER、配当利回りなどに起こる。長い時間を経て機能していなかったときに戻り、再び長く目を向けられない時代が続く。その後、再び流行に便乗して価値が認められると、一時的に機能するようになる。
伝統的な職人はこのような非常に現実的な相場現象を嫌う。なぜなら自分自身の道具が常に同じように機能してほしいからである。
これは検証を継続し、革新を進めていく重要性を示している。私も自分のPSRを実行する前に検証して、相場に織り込まれて使い物にならなくなってからも無邪気にそれに頼ることはないようにした。私はとうの昔にPSRを主要な道具として使うことに見切りをつけており、それ以来ほかにも資本市場テクノロジーをたくさん開発している。


あなたも三つの疑問を数回使って他人の知らないことを二、三発見するかもしれない。しかしこの三つの疑問を自分の思考回路の一部にしてしまわないと、自分が見つけた優位性は結局なくなってしまう。
ある”からくり”を発見しても、そこからけっして革新していこうとしない投資家のことを指す言葉がある。「一発屋」だ。
投資の歴史は一発屋であふれでいる。書店の棚や経済ニュース番組は、一五分で終わる時代遅れで無駄なアドバイスを、無意味に長々と話している一発屋でいっぱいなのだ。


二五年前に私がやっていたことで現在もやっていることはほぼゼロである。もしあったとすればかなり恥ずかしいことだ。一〇年後に現在私がやっていることを変えさせるようなことを発見できていればいいなと思う。進化はこのゲームの名前であり、私の目標は新しいことを開発し、変化し続けることである。


・行動ファイナンス

あなたの投資活動の最大の敵は、あなた自身の脳である。


私たちの脳の構造として、脳が受け入れて良しと認知する情報については、私たちは正しく、簡単に、迅速に処理できるようになっている。私たちの脳が良しとして処理しないように組み込まれている情報に対しては単に目を向けない。その理由は、私たちの脳の構造が決まった経路や枠組みを経由してインプットされるように進化をしてきたからである。それ以外に道はないのだ。


プライドを高め、反省を避けることは、私たちの祖先の生存には不可欠なことだったのである。当時は必要なことであった。そして、私たちはいまだに同じことをして、挑戦に意欲をわかせているのである。
しかし現代では、そのような行動が投資では間違いにつながる。


投資家は明らかに自信過剰であり、実際に自分が知っている以上に知っていると思い込んでいる。自分の実力を過大評価している。ウォールストリートジャーナルや数多くあるブログやニュースレターを毎日読んでいるからといって投資のエキスパートにはなれない。ところが、多くの知性ある人々が一般メディアを購読して理解する能力があれば、十分勝ち目のある売買ができると思っているのだ。そんなことをても、自分の身に降りかかる危険を軽減することにはならない。投資は難しい。高い教育を受けて経験豊富なプロが、普通のアマと同じように愚かな投資をしている例は余るほど見られる。


あなたの脳は身体的な生存を考慮して設計されているのであり、金銭的な生存ではない。鋭い牙を持った野獣の待ち伏せを避けるためには素晴らしい本能といえるが、資本市場を分析するには非常に危険なものとなり得る。完全に有害だ。


反省を受け入れるのだ。あなたにも間違いを犯す可能性があり、また間違いを犯すであろうことを知る。そうすればあなたの判断にも結果がついてくる。
これはゲームである。そこで七割正しければ、長期的にとてつもなく大きな成功を収めることになる。
これはたくさん間違いも犯しなさいということだ。間違いを犯すことに何の問題もない。自分の間違いをより多く受け入れて、それを学びの機会とみることで、長期的には間違いが減っていく。


他人が知らないことを自分が知っていると確信が持てているときでも、私はいつも自分には間違う可能性があると思っている。しかも実際に起こってしまう。この原則は私の行動すべてに当てはまる。



私の父は集中したポートフォリオを生涯支持した人物だった。バフェットも集中したポートフォリオを支持している人物だ。それでも私はあなたにいっておくが、集中したポートフォリオを持つことができる唯一の根拠は、他人が知らないことを知っているというほぼ完璧に近い確信である。


株式を一銘柄や二銘柄、あるいは一〇銘柄を買っただけでお金持ちになった人は、単に運の良い愚か者である。確かにひとつの株式が急上昇して興奮するような経験をすることもある。しかし、壊滅的な急落を経験することもある。
注目したいのは、この幸運を手にして勝利を収めた愚か者は、プライドを積み上げて自分が賢いと思いこんでいく。おそらく、この人の配偶者や子供たちのほうが慎重で、彼の成功についてよく分かっているだろう。


私はたくさんの間違いを犯す。それは分かっている。幸運にも自分のキャリアのなかで間違いよりも正解のほうが多かったが、間違いを犯してきたことは知っている。今後も確実に間違うだろう。何度も間違うだろう。


・その他

この大きく、広く、素晴らしい、そしていかれた世界に、株価を動かす要因は、たった二つしかない。いつでもどこでも株価を決めるのは「需要と供給の変化」だけである。


証券の供給量は、短期的には比較的固定している。したがって、投資家としてほぼ一貫してやるべきは、需要を測定することだけだ。需要の方向性を読むことができれば、短期的な予想の仕方が分かったも同然である。


十分に長い期間で検証してみれば、小型バリュー株が市場で最も値動きが悪いとされるときもあり、自信を失うだろう。数十年単位で見てみるのだ。もし優位性を見つけるために二O年も待たなければならないのなら、本当の優位性は存在しない。


株式市場は純粋な資本主義である。あなたの買う株式は、あなたの人種、性別、年齢、国籍に区別をつけない。需要と供給に従って値が付く。それ以外は何も関係ない。世界的な存在であり、効率的、動きが激しく、常に驚きが潜んでおり、未知であり、美しい。


他人があなたの頭はおかしいと思っても、何の問題もない。損することもない。インターネットやブログが発達するなか、他人が自分の記事やコラムを読み、自分の最高の作品に酷評を与えることにも慣れてきた(もちろん、他人のほうが正しいときもある。そのときは私が間違っている。しかし、彼らが私についてどう思おうと、私が口出しすることではない)。
私は自分自身を訓練してきた。その結果、あまりよく知らない人が、自分のことや自分の文章についてどう考えようと、そのような人たちは無視できる。
ただ、もし妻が私に対して怒っていれば真剣に考える。妻は私のことをよく知っている。私の強みや弱みを知り、私の幸せを願ってくれている。そういった家族、友人、仲間以外の人であれば、誰が私に腹を立てようとかまわない。私の発言に不満があれば、私を批判してもらってかまわない。
ただ、結局は寂しい感情に行き着くことを覚えておいてほしい。あなた自身も、これと同じ寂しい感情を持つことになるだろう。大部分の人があなたのことをどう思おうと、あなたには全く関係ないのだ。そして、もし彼らがあなたのことをおかしい人だと思っているならば、それは逆に良いことに違いないのだ。





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