The role of shorting, firm size, and time on market anomalies

2015年09月18日

「ウォール街のモメンタムウォーカー」で何度か引用されていた Isreal と Moskowitz の The role of shorting, firm size, and time on market anomalies を見てみました。

各アノマリーにおけるショートポジションの重要性、サイズ別のバリュー・モメンタム効果、期間別のアノマリーリターンの分析といった内容ですが、サイズ・バリュー・モメンタム単体のシンプルな成績も掲載されています。
米国株のほかに、英欧日の株式、株価指数インデックス、通貨やコモディティといった他の資産クラスの検証もありますし、バリューアノマリーの補足としてE/P、C/P、D/P、短期リバーサル、バリュー合成指標の成績も付録に掲載されています。2013年に発表された研究のため検証データも2011年末までと新しいです。各アノマリーの効果を詳しく知ることができる内容だと思いました。

しかしながら、この論文に限った話ではありませんが、アカデミックな研究と実際の投資家感覚のズレも感じました。
下の4つのグラフは最初に出てくるアメリカ株を対象にしたサイズ・バリュー・モメンタム効果の累積リターンです。左上がロングショートポートフォリオ、左下がロングショートポートフォリオのCAPMアルファ、右上がロングオンリーポートフォリオ、右下がロングオンリーポートフォリオのCAPMアルファとなっています。
4つのグラフのうち、普通の投資家であればロングオンリーポートフォリオの成績に注目すると思います。しかし、アカデミックの研究ではロングショートのCAPMアルファを規準にすることが多い感じです。



で、ベータで調整するアルファの成績とロングオンリーのリターンは一致しないことがあります。
下はサイズ・バリュー・モメンタムの10分位数のリターンの一覧表です。Raw excess (Tビルを引いた超過リターン)はそれぞれ直線的に増加しており、小型株ほど、バリュー株ほど、モメンタムが強いほどリターンが高くなっているのがわかります。
しかし、サイズとバリューのシャープレシオは平坦で、アルファのT検定は有意ではないレベルです。



「ウォール街のモメンタムウォーカー」には、Isreal と Moskowitz の研究によると”小型株プレミアムは、全期間においても、4つの20年期間のどの期間においても有意性はなかった”と書かれていますが、これはシャープレシオやアルファの数字を指しているのだと思います。
しかし、ボラティリティやベータは大切だと思いますが、小型株をロングしたときの単純なリターンは市場を上回っているわけで、普通の投資家にすればそちらの方がロングショートのアルファよりも重要な話なのではと感じてしまいます。

以下はメモです。

■ 小型株効果

サイズのロングショートアルファは、全期間(1926~2011年)もどのサブ期間(20年単位)もプラスではあるが有意性はない。

10分位数のリターンは直線的に増加しているがシャープレシオはフラット。各分位数間のマーケットアルファに明確な傾向はない。

時価総額ウェイトと均等ウェイトの比較や Fama と MacBeth の分析から、サイズ効果は小型株、特に超小型株へ大きく投資するときに現れる。


■ バリュー効果

バリューのロングショートとロングオンリーの全期間のアルファは有意。しかし、20年ごとのサブ期間を見ると1970~1989年のリターンが突出しており、それ以外の期間においては(5%レベルで)有意差がない。

E/P、C/P、D/P、短期リバーサルは、1951年以降のデータを使ったE/PとC/Pに明確な傾向が見られたが、1927年からのD/Pと1931年からの短期リバーサルには明確な傾向が見られなかった。D/P・短期リバーサル・B/Pも1951年以降のデータでは明確な傾向がみられる。
1926年~2011年までの全期間において、5つの合成指標のアルファはプラスかつ(5%レベルで)有意性があった。とはいえ前半部分のプレミアムは弱い。

10分位数のリターンは直線的に増加しているがシャープレシオはフラット。各分位数間のマーケットアルファに明確な傾向はない。

バリュープレミアムはロングショートもロングオンリーも小型株ほど大きく、サイズが大きくなるにつれて弱くなり、上から2つの分位数では有意ではなくなる。小型株のバリュープレミアムは4つのサブ期間においても一貫して高い。

他のバリュー指標でも小型株ほどバリュープレミアムが大きいがBE/MEほど極端ではない。他の指標の最も大型のサイズのバリュープレミアムはBE/MEより大き有意性がある。


■ モメンタム効果

モメンタムのアルファはロングショートもロングオンリーも大きなプラス。全期間でもどのサブ期間でも同じ。

10分位数ではリターンもシャープレシオもアルファも直線的に増加。

サイズ別のモメンタムのアルファはどのサイズでも大きく明確な傾向はない。ただし、ロングのシンプルなリターンは小型株ほど大きい。


■ 国際株

USとUKは1972年2月~2011年、ヨーロッパと日本は1974年2月~2011年のデータ。3-1スプレッドとロングサイドのアルファのみで単純なリターンの数字は載っていない。

バリュー効果とモメンタム効果は堅固。英欧のバリューと日のモメンタムが例外で、どれもプラスの数字だが有意ではない。ただし、英欧もロングオンリーのバリュープレミアムは大きい。日のモメンタムだけは突出して効果が弱い。一方でバリューのアルファは日がもっとも大きい。




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