What Works on Wall Street 第4版

2015年10月10日

2011年に出版された「ウォール街で勝つ法則」の第4版を読みました。

「ウォール街で勝つ法則」は主にファンダメンタル系の指標の有効性を過去数十年のデータで検証した本です。定量的ファンダメンタル投資家にとってはバイブル的な一冊となっています。

第4版で検証している指標は、時価総額、PER、EV/EBITDA、PBR、PCFR、PSR、アクルーアルや負債比率などの財務指標、配当利回り、バイバックイールド、株主利回り、EPS変化率、利益率、ROE、ROA、レラティブ・ストレングス、などです。
初版から追加されたのは、EV/EBITDA、財務指標、バイバックイールド・株主利回り、といった指標です。また、複数のバリュー指標を使った合成バリュー指標も検証しています。

各指標ごとに上位・下位10%のリターン・リスク・ドローダウンの分析や10分位数別の成績が掲載されています。充実した内容ですが、数字データメインなので読み物としてはあまり面白くないかもしれません。ただ、無駄な話が少なくグラフが多用されているので英語本としては見やすいと思います。ページ数は多いですが。

過去データを使ってファンダメンタル指標を網羅的に調べた本は少ないです。おすすめの一冊。
初版と比べて検証条件も結論部分も良い方向に改善されており、既読の人も十分読む価値があると思いました。


■ 初版から変更された主な検証条件

・データは1963年~2009年までが基本だが、一部の指標については1926年からのデータが使われている。

・EV/EBITDA、アクルーアルなどの財務指標、バイバックイールド・株主利回りなどの指標の追加。合成バリュー指標の検証。

・セクターごとにどの指標が効果的かを調べている。

・パフォーマンスを見るのに上位・下位50銘柄ポートフォリオに代わって上位・下位10%ポートフォリオを使用。10分位数ごとの成績については初版と同様に掲載されている。

・オリジナル版が年1回(12月31日)リバランスのポートフォリオだったのに対して、今回は毎月作成ポートフォリオ12個の平均リターンを使用している。各ポートフォリオのリバランスは年に1回。
パフォーマンスのばらつきは月ごとにかなり大きく、例えばPERの成績は15.44%(12個の平均)だが、最高が1月リバランスの19.03%に対して、最低が3月リバランスの13.81%となっている。


■ その他の検証条件

・先読みバイアスを避けるために、四半期データは3カ月の、年次データは半年のラグをもうける。

・ポートフォリオは均等ウェイト、配当再投資、取引コストなどは考慮しない。

・名目リターンだが、28章(各指標のランク付け)では実質リターンも書かれている。

・全銘柄と大型株の検証はほぼすべての指標でされている。全銘柄はインフレ調整後の時価総額が2億ドル以上の銘柄。大型株は時価総額がデータベースの平均以上の銘柄。上位17%ほどが相当する。


■ 時価総額

・全銘柄のリターンは大型株やS&P500をやや上回るが、標準偏差などのリスクも高い。

・時価総額25百万ドル以下のマイクロキャップのリターンは良いが、条件(株価1ドル制限、リターンリミット、ミッシングデータの扱いなど)によって数十%成績が変わってしまう。著者は現実的なマイクロキャップのリターンは1964年からの期間で17.6%~18.2%だろうと言っている。ただし、取引コストなどを考えるとマイクロキャップのリターンは現実的ではないとのこと。

・時価総額50百万ドル~250百万ドルの取引可能なマイクロキャップのリターンは小型株よりもやや良い程度。

・10分位では、最も小型の株が最高のリターンで最も大型のグループが最低のリターンだが差は少ない。小型株の標準偏差は大きいのでシャープレシオで見ると全銘柄や大型株と変わらない。




■割安株

・PER、EV/EBITDA、EV/FCF、EV/売上、PCFR、PFCFR、PSR、PBR、配当利回り、バイバックイールド、株主利回り、といった指標が検証されており、どれもだいたい機能している。

・1963-2009年の期間ではEV/EBITDAがベストの指標。しかし、どの指標がベストかは期間や条件によって変わるだろうとのこと。

・オリジナル版のベストだったPSRは成績が悪化した。理由は以下の2点。
検証ルールの変更。50銘柄・年1回リバランス→上位10%・毎月作成12個ポートフォリオの平均リターン。
2007年と2008年にPSRのパフォーマンスが非常に悪かった。

・PBRは1927年からでも機能している。しかし、低PBRが有効でない時期もあった。1927年~1963年の期間ではPBR下位10%の成績が最も悪い(ただし2、3、4番目のグループはマーケットを上回っている)。
また、PBR下位10%のグループは1927年~1939年に唯一損失を出したグループで、2007年~2009年の期間でも最悪の成績。低PBRの会社はリスクの高い会社という可能性がある。

・バイバックイールドは発行済み株式数の変化率。自社株買いや増資による変化を見る。1位と2位のグループは市場平均を上回り、9位と10位のグループが下回る。中間は差が少ない。
株主利回り(Shareholder Yield)は配当利回りとバイバックイールドの組み合わせ。上位10%のリターンはバイバックイールドを下回るが、10分位数のグラフは右下がりの階段になる。

・配当を0~50%カットした会社の次の年のリターンは-0.7%低下した。50%以上カットした会社は次の年にマーケットを3.6%下回り、配当を停止した会社は5.1%下回った。増配の会社のリターンは次の年にベンチマークを4.5%上回り、配当を開始した会社は9.2%上回った。

・合成バリュー指標は3つ作成している。Value Factor 1 はPBR、PER、PSR、EV/EBITDA、PCFRの5つの指標を使って作成(各指標ごとに上位1%は100点・下位1%を1点としてで5つの指標の合計点)。VF2はVF1に株主利回りを、VF3はVF1にバイバックイールドを追加。全銘柄を対象とした単独指標のリターンとしてはVF3が最も良い。

・CAPMではリスクは報われるとされる。しかし、市場を上回った16個の戦略のうち12個は全銘柄よりも低い標準偏差だった。高PER、高PBR、高PCFR、高PSR、高VF1は全銘柄よりも高い標準偏差だがまったく報われていない。

・バリュー系指標(上位10%ポートフォリオ)のリターンを成績順に並べ替えたのが下のグラフ。すべての指標がマーケットの平均を上回っている。全銘柄では合成バリュー指標の成績が良い。大型株ではバイバックイールドが入っている指標のリターンが良い。






■ その他の指標

・財務系の指標としては、アクルーアル/株価、株主資本比率、売上/総資産、CF/負債、負債/株主資本比率、外部からの資金調達(負債&新株)、負債変化率、減価償却費/資本費用、ネット営業資産変化率、アクルーアル/総資産、アクルーアル/平均資産、が取り上げられている。
負債/株主資本比率のようにまったく効果がない指標もあるが、階段状にはならなくとも下位(または上位)1、2グループの成績が悪い指標が多い。全銘柄で下位10%の成績が特に悪いのは外部からの資金調達とCF/負債。

・利益の質として、アクルーアル/総資産、ネット営業資産変化率、アクルーアル/平均資産、減価償却費/資本費用、を使った合成指標を検証しており、全銘柄でも大型株でも有効に機能している。

・EPS変化率、利益率、ROE、ROAといったグロース系の指標は明確な傾向がなく有効ではない。ただし、最下位(10番目)のグループのリターンはどれも悪い。

・レラティブストレングスは全銘柄でも大型株でも10分位数グラフで完全な右下がりの階段。6か月モメンタムの方が12か月モメンタムよりもリターンが良い。
レラティブストレングスの成績が悪いのは深刻な景気後退に突入するとき。1995年~2000年2月まで、6カ月モメンタムは全銘柄の2倍のリターンを出した。しかし、次の3年間では-15.52%のリターンとなった(全銘柄は-9.01%の)。
また、深刻な景気後退から抜け出すときはモメンタムの逆転が起こる。1932年や2009年の底打ちでは売られた銘柄の反発が非常に大きかった。

・1964年からのデータでは、6か月の取引量が最も大きいグループが最も低いリターンで、取引量が最も小さいグループが最も高いリターンとなった。取引量とモメンタムは組み合わせは考える価値があるかもとのこと。

・最もボラティリティの高いグループのリターンは非常に悪いので避けるべき。


■ ランキング

・絶対リターンの上位4つは投資可能なマイクロキャップ(時価総額50百万~250百万ドル)を使った戦略。

・マイクロキャップを使わない戦略のトップはトレンドバリュー。トレンドバリューはValue Factor 2 と6か月モメンタムの組み合わせ。全銘柄の中からVF2の上位10%を選び、その中から6か月モメンタムの上位25銘柄・50銘柄を買う。トレンドバリューはリスク調整済みリターン(シャープレシオ)ではトップの戦略となった。

・1964-2009年の期間では、全銘柄のリターン11.22%・標準偏差18.99%に対して、トレンドバリュー25銘柄のリターン21.19%・標準偏差17.44%、50銘柄のリターン19.85%・標準偏差16.51%とのこと。




最近の記事