小型株効果

2016年08月15日

小型株効果にいくつか読んだのでまとめます。


○ 全体的な議論

A literature review of the size effect という文献では、小型株効果についてこんな感じに書かれています。

・小型株効果は1981年に初めて報告されたが、1980年代初め以降のアメリカ株、1980年代後半以降のイギリス株では効果が弱まっているか消え去ってしまっている。グローバル市場でも同様の結果。

・小型株効果をリスクで説明する説が最初に出されたが結論は出ていない。現在は小型株効果そのものに疑問がある状況。小型株効果を流動性リスクで説明する説は有望。

・小型株効果は超小型株に集中している。

・小型株効果は1月に片寄っている。ただしこの傾向はイギリスでは見られない。


○ 米国市場での有効性

小型株効果として一般的に使われているSMB(大型株と小型株のロングショート)のリターンは、長期で見るとプラスであるもののバリューやモメンタムと比べると低く、対象期間によって有意性があったりなかったりという感じのようです。

例えば Size Matters, If You Control Your Junk によると、1926年7月~2012年12月のSMBの月次リターンは0.23%(t値2.27)、1957年7月~2012年12月は0.22%(t値1.93%)とプラスでt値も2%前後ですが、1980年1月~1999年12月の期間は-0.04%というマイナスリターンです。

下のグラフは「ウォール街で勝つ法則」に掲載されていた1927年~2009年の小型株の全銘柄に対する超過リターン(5年平均)の推移です。
グラフを見てわかるように小型株が弱い期間も多く、成績はあまり一貫していません。特に小型株効果が報告された後の80~90年代はマイナスの期間の方が多くなっています。




次にロング・オンリーの成績です。
下のグラフはケネス・フレンチ教授のデータベースから1926年~2015年におけるサイズ別の時価総額加重ポートフォリオの年率リターンを計算したものです。

リターンは最大グループが最も低く、最小グループとの差は3.2%と比較的大きいです。ただ、3番目のグループ以降はリターンの違いが少ないです。




The Case for Microcap には同じデータベースを使って過去75年・50年・25年のリターンとリスクを調べた結果が掲載されていました。

この資料によると、最大グループと最小グループのリターンの差は過去25年でも50年でも2.57~2.75%あり小型株のリターンが高くなっています。ただし、リスク(標準偏差)を見ると最小グループは最大グループに比べて7%ほど高い値です。





ちなみにリターンの表ではグループ1・9・10が、リスクの表ではグループ1・7・10が比較されていますが、これはリターンでは大型株のグループ1とマイクロキャップのグループ9・10を、リスクでは大型株のグループ1と小型株のグループ7とマイクロキャップのグループ10を比較するためのようです。

同資料には全銘柄を10分したグループごとの時価総額や各指数への組み入れ比率が掲載さていますが、これを見ると一般に代表的な小型株指数とされているラッセル2000の構成銘柄はグループ5・6・7・8が中心で、本当に小型の銘柄(マイクロキャップ)を買うのであればラッセルマイクロキャップ指数を選ぶ必要があることが分かります。




もうひとつ、Risk Premium Report というレポートでは、1963年~2012年の期間を対象にサイズを25分に細かく区切ってリターンを調べています。サイズも時価総額の他に売上や資産など8つの指標の結果が掲載されています。

グラフを見るとサイズが小さくなるほどリターンも上がっているのですが、特に右端の超小型株でリターンが跳ね上がっているのがわかります。



超小型株のリターンが高いというのは「ウォール街で勝つ法則」でも触れられています。
この本で検証されている全戦略のうち最も利益率が高い上位4つは投資可能なマイクロキャップ(時価総額0.5~2.5億ドル)を使った戦略ですし、(著者は流動性などの点から現実的ではないと書いていますが)0.25億ドル以下の超小型株のリターンはおそらく年18%前後になるだろうとのことです。


○ グローバル市場での有効性

A literature review of the size effect で参考として挙げられていた資料のうち、発行年が新しいのはファーマとフレンチ(2011年)と Dimson(2011年)の研究です。

・ファーマとフレンチ Size, value, and momentum in international stock returns.
1989年11月~2011年3月の期間を対象に、先進23ヵ国を北アメリカ、日本、アジア太平洋、ヨーロッパの4つの地域に分けてサイズ・バリュー・モメンタムの効果を調べています。全銘柄が対象です。
SMB(時価総額上位90%の大型株と下位10%の小型株のロングショート)は4地域すべてで小さくサイズ効果は観察されなかったとのこと。ヨーロッパ、日本、アジア太平洋はマイナスです。

・Dimson(2011)
参考資料に挙げられていた論文が見つからなかったのですが、同じ著者の Global Investment Yearbook 2014 には、2000年~2013年の期間の新興国を対象としてサイズプレミアムが検証されています。
手法などの詳細は不明ですが、それによると新興国全体のサイズ効果は1.9%のプラスとなっています。ただ、先進国の6.6%に比べると低く、またバリュープレミアムの4.3%に比べても低い値となっています。



その他に検索していて見つけたのがこちらの文献です。

Size, value, and momentum in Emerging Market Stock Returns: Integrated or Segmented Pricing? (2015年)
1996年~2012年の期間を対象に、21の新興国をラテンアメリカ、東ヨーロッパ、アジアの3つの地域に分けてサイズ・バリュー・モメンタム効果を調べた研究です。上のファーマとフレンチの研究を新興国に広げた感じです。
結果は効果がある地域とない地域が混在しています。ラテンアメリカはマイナス、東ヨーロッパはゼロ近く、アジアはやや大きなプラスで、アジアとBRICsは10%で有意とのこと。新興国全体ではややプラスですが、効果は小さく有意ではないとのことです。


○ 感想

ざっと見た感じですが、全体としては小型株のリターンが高い傾向はあるようです。ただ、バリューやモメンタムに比べるとリターンは低いですし、時期や国によっても一定しておらず、効果があるとしてもあまり強力なアノマリーではないのかなという印象です。

ただ、他のアノマリーとの組み合わせというのは有望なのかもしれません。小型株で割安株効果が強いのはよく知られていますし、企業の質を考慮すると小型株効果がはっきりでるという Size Matters, If You Control Your Junk という研究もありました。

ちなみにこの研究の元の論文は難しくて読み切れなかったのですが、内容としてはQMJ(クオリティ・マイナス・ジャンク)を加えることでSMBのリターンが劇的に上がるということみたいです。
たとえば1957年7月~2012年12月の期間を見ると、4ファクターモデルでのSMBのアルファ0.14%(t値1.23)がQMJを加えることで0.49%(t値4.89)と大幅にアップしています。
さらに、対象期間や季節を通して成績が安定する、グローバル市場でもより機能する、一部の銘柄に偏らない(リターンがサイズに比例)、とちょっとうますぎるのではという話が書かれています。

まあ、もともと小型株市場はアナリストのフォローが少なく機関投資家も参加できないため非効率という話が多いです。そうであれば割安性や企業の質を考えることでリターンが大きく改善できるというのはあり得ない話でもないのかなとも思ったりもします。




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