Global Investment Returns Yearbook 2016

2016年03月31日

クレディスイスの Global investment return yearbook 2016 が公開されていました。

毎年発行されているこのレポートには3本の分析記事と23ヵ国・3地域における1900年からの株式・債券・短期債のリターンのデータが掲載されています。
記事のうち2本は「証券市場の真実―101年間の目撃録」の著者であるエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・スタントンの3人によって書かれており、今年は政策金利が株式・債券に与える影響について分析しています。タイムリーな話題ですね。
3番目の記事は今回の危機(2008年)と過去2回の危機(1890年代と1930年代)における株式・債券の値動きについて書かれています。

レポートは英語ですが、図やグラフが多用されいてるため眺めているだけでもなんとなく見当がつきます。長期データに基づいた分析なので読む価値は非常に高いと思います。

○ Does hiking damage your wealth?

・政策金利の変更と株式・債券の反応

アメリカとイギリスの日次データを使って、政策金利がアナウンスされた日とその前後20日間の株式や債券のリターンを調べています。
結果は、株式・債券とも利下げで上がり、利上げで下がるという予想どおりの動きとなっています。ただ、アナウンス日のインパクトはそれほど大きくないとのこと。
アメリカの場合、株式はアナウンスの前20日は動きがないのに対して、債券はアナウンスの前20日に大きく動いています。


・グローバル市場

21か国、1900年からのデータを使ったグローバル市場の分析もあります。こちらは日次データがないため、年次データを用いて政策金利の変更と株式・債券リターンを見ています。
政策金利の変更は、短期債(Treasury bill)のリターンが前年より25bpより低ければ利下げの年、25bpより高ければ利上げの年、それ以外の小さな動きは無視する、という基準です。利上げ・利下げに続く年の平均リターンを出して両者の差をグラフにしています。

株式の実質リターンは、日本とニュージーランドを除いて利下げ翌年のリターンが利上げよりも高くなっています。21か国の平均は8.4%で、USやUKのリターンは低い方に位置しています。
日次データを使ったUS・UKの分析では政策金利が実質株価に与える影響は大きかったので、年次データを使った分析は実態を過小評価している可能性もあるとのことです。

その他、期間を5年にしたり、1950年以降のデータに限ってもリターンの傾向は似ているそうです。1950年以降では、21か国のうち20か国(ニュージーランドが例外)のリターンは高くなり、平均は8.9%になったとのこと。



債券の場合、3分の2の国は利下げ後の実質リターンが利上げ後よりも高くなったそうです。平均リターンは1.5%で、1950年以降に限ってもリターンは同じとのこと。




○ Cycling for the good of your wealth

・金利サイクルと各資産のリターン

引締と緩和サイクルにおけるUS・UKの各資産の実質リターンが掲載されています。引締サイクルは利上げが行われてから次に利下げが起きるまで、緩和サイクルは利下げが行われてから次に利上げが起きるまでの期間というシンプルな定義です。USデータは1913年から、UKは1930年からです。



US株の全期間の実質リターンは年率換算6.2%、引締サイクル2.3%、緩和サイクル9.3%、債券は全期間が2.2%、引締0.3%、緩和3.6%となっており、株式・債券ともに緩和サイクルでリターンが高くなっています。
通説どおりの結果ですが、利下げの期間は投資家が株を買いたくない経済状況であるの可能性(リスクプレミアムが高くなる)、利上げの期間は高インフレの時期にあたりインフレがリターンを悪くしている可能性もあると指摘されています。

ドルの実質リターンは全期間-0.3%、引締サイクル-1.7%、緩和サイクルは0.6%と予想に反する動きになっています。これについては、引締サイクルの高いインフレ率を反映しているのか、緩和サイクルで起こりがちな好調なUS経済を反映しているのかも、とのことです。

UKの場合は、株式はUSAと同じ傾向、債券のリターンはどちらの期間もほぼ同じ、通貨はUSと異なり引締サイクルで高く緩和サイクルで弱くなっています。


・金利サイクルとスタイルリターン

金利サイクルとバリュー、インカム、サイズ、モメンタムのリターンも掲載されています。データは、USが1926年から2015年、UKが1955年から2015年の期間。
USとUKの両国で統計的に有意な違いがあったのはサイズプレミアムで、利下げ期間にプレミアムが大きく(小型株有利)、利上げ期間はプレミアムがマイナスになっています。



これ以外にも、金利サイクルとセクターリターン、金利サイクルと実物資産のリターンといったことが書かれていました。


○ When bonds aren’t bonds anymore

2008年からの危機、1890年代の危機、1930年代の危機、と3つの危機における株式・債券の動きを比較しています。

・危機後の最初の7、8年は株式・債券ともに高いリターン。株式は低いバリュエーションからの反発、債券はデフレショックによる金利の低下に恩恵を受ける。

・次の10年は株式・債券ともに低いリターンの傾向。過去2回の危機では債券はマイナスのリターンになってしまっている。

・今後のリターンは、株式バブルが起きる可能性は排除しないが、現実的には過去の平均かそれ以下の成績になるのではないか。






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