日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

2014年11月26日

橘玲さんの「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」を読みました。
国家破産の危機を過度に煽るでもなく、これから起こるであろうシナリオをいくつか挙げ、それぞれの状況に合った金融商品を紹介した本です。

この本ではまず3つのシナリオが提示されています。

① 楽観シナリオ。アベノミクスが成功して高度経済成長がふたたび始まる。
② 金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く。
③ 国債価格の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破たんし、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る。

このうち日本破綻のシナリオは③ですが、この場合でもすぐにデフォルトが起こるわけでなく、いくつかの段階を経て危機が悪化していくとのことです(ギリシア危機でも財政の健全性が危ぶまれてから国際価格が急落するまで2年以上が経過している)。

第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
第3ステージ (国家破産)日本政府が国債のデフォルトを宣告し、IMFの管理下に入る

で、それぞれのステージに合った金融商品を紹介しています。

○ 第1ステージ
金利の上昇に応じて利率が上がる普通預金で対応可能。
金利上昇がそのまま円安につながるわけではないので(高金利の通貨は高くなる経験則がある)、この段階では外貨預金で為替リスクを取る必要はない。

○第2ステージ
第2ステージでは普通預金だけでは資産を守ることができなくなる。国債ベアファンド、外貨預金、物価連動国債ファンド、の3つの金融商品で対応する。

・国債ベアファンド・・・国債の下落にレバレッジをかけて投資できる。

・外貨預金・・・円安で為替差益を得ることができる。

・物価連動国債ファンド・・・消費者物価指数に応じて元本が増減するように設定されている。インフレヘッジに最適。

一方で、株、不動産、商品などは適当とは言えない。

・株と不動産・・・インフレに強いと言われているが、それは賃金の上昇と経済成長がともなった場合。スタグフレーションでは株価も地価も下落する。

・商品・・・財政破綻に伴うインフレは日本の国内現象であり、世界商品と直接かかわりがあるわけではない。その上商品価格は需給によって変動するので、日本経済混乱のショックで相場が下落する可能性もある。

・金・・・金投資は純粋なギャンブル。リーマンショックの直後、金は50ドル台から25ドル台まで約半分に下落した。財政破たんのリスクヘッジとして金投資がどの程度有用化は疑問。

○ 第3ステージ
破滅シナリオが最終ステージに入ると、これまでの資産防衛戦略はほとんど無効になってしまう。

・海外銀行の外貨預金・・・預金封鎖のもっとも簡単で確実なヘッジ。日本の法が及ばない海外の金融機関に資産を移転する。

・日本国債ベアETF・・・ニューヨーク市場に上場された日本国債ベアETFを海外の証券会社で購入して金利上昇から利益を得る。

その他、株の空売り、FX、オプション、といったの金融商品についての説明も書いてありました。

ちなみにここで書かれていた国債ベアファンドについての説明は知らなかったことが多かったので役に立ちました。メモしておきます。

国債ベアファンドの基準価額は、「額面100円、期間10年、年利率6%」という条件のヴァーチャルな長期国債の価格と逆に動く。

現在の国債価格は150円近く。今後金利が下落したとしてもゼロ未満になることはないので、国債価格は金利0%の160円が上限になる。それに対して、金利が2%に上がれば国際価格は136円、3%で126円、5%で108円、10%で72円と下落していく。
国債の売りポジションは、限定された損失で大きな利益を得られる可能性がある。

現在販売されている国債ベアファンドは国債価格の変動に対して4~5倍のレバレッジをかけて運用されている。しかし、基準価格がマイナスになるようなファンドは存在しない。これは国債ベアファンドの基準価額が前日の国債価格との比率(前日比)で決まるように設定されているため。

例えば、100円の国債価格が1日目105円に上がって2日目に100円に戻ったとする。先物では損益ゼロ。
ベアファンドの場合、1日目は5%の損失(先物は利益)、2日目に4.76%の利益で、最終的な基準価額は99.52となり損失が発生してしまう。
レバレッジをかけたファンドの特徴として、国債ベアファンドは一定のレンジで上下に動いた場合でも基準価額は下落してしまう。
他方、国際価格が一方的に上昇していくケースでもゼロを下回らないように損失が抑えられる。また、国債価格が大きく下落するときは指数関数的に利益が伸びる。


感想です。国家は単についてよく調べているわけではないですが、思ったことを書きます。

財政危機は金利上昇(国債価格の下落)から始まるというのがこの本の主張で、最近までは僕もそうだと思ってましたが、日銀が大量の国債を買っている状況では金利上昇が起きないまま状況の悪化が進む可能性もあるのかなという気がします。金融緩和による円安から円安主導のインフレの抑えが利かなくなる状況など。
日銀は人為的に金利をインフレ率以下に抑えることが可能なので、普通預金はステージ初期でも有効な対策にならない可能性があるのではないでしょうか。

国債ベアファンドは魅力的ですがタイミングがシビアで難易度が高そうという印象です。レンジ相場で損失が膨らんでいくというのはかなり厳しいです。仮にうまいタイミングで投資できたとしても、すぐ利確してしまいそうです。

物価連動ファンドはインフレヘッジとしてはとても良さそうだと思います。気になる点としては、
・物価の値上がり分についても20%の税金がかかってしまう(どの商品も同じだけど)。
・政府の信用が揺らいで金利(リスクプレミアム)が上昇したときに含み損が出てしまうのでは?満期になれば元本が返ってくるとしてもそれまで身動きとれなくなってしまうのでは?
・政府がデフォルトした場合ヘアカットの対象になりそう。財政危機に備えるのに、その政府の国債を買うという矛盾。

結局のところ、ある程度の資産を持っている人は海外の銀行に外貨資産を持つというのが最適な防衛手段なのかなという感想です。

2%の希薄化

2014年08月30日

Earnings Growth: The Two Percent Dilutionのメモです。


・米国

1802年から2001年の各種資産の年率リターンは、株8.42%、債権4.88%、短期債4.21%だった。

1800年から2000年の期間、年率の実質GDP成長率は約3.7%だった。比較的一律でスムーズな増加。




企業の利益も大恐慌を除けば、GDPと同じようなスムーズに伸びている。1929年以降では、企業の収益はGDPの8~10%ほどで推移。




1929年以降、GDPと企業収益は直接的に結びついている。よって、もし新株発行がなければ、1株あたりの利益と配当はGDPと同じように増えることになる。しかしながら、希薄化効果は存在する。

1871年以降、実質GDP成長率3.45%に対して、実質株価は年2.48%のリターンだった。PERの上昇があったにもかかわらず、年0.98%のスリッページが存在する。さらにPERの上昇効果を除くと、1株あたりの利益と配当は実質GDP成長率よりも2%落ちる。

全体の経済成長の半分以上は、既存の会社の成長ではなく、新しいアイディアや新しい会社の設立からもたらされる。株式投資は既存のビジネスへの参加しかできない。

1人あたりGDP、1人あたり収入、1株あたり利益、1株あたり配当、これらはすべて生産性の上昇と同じような比率で成長する。




・世界

1900~2000年、16か国
実質配当成長率、実質株価リターン、実質GDP成長率、1人あたり実質GDP成長率の比較。

配当成長とGDP成長のギャップは平均で年3.3%あった。1人あたりGDP成長とのギャップでも2.4%ある。
戦争の影響が軽かった7か国でも、配当成長はGDP成長より2.3%、1人あたりGDP成長より1.1%低い。
スウェーデンを除いてすべての国の配当成長はGDP成長を下回った。1人あたりGDP成長を上回ったのも2か国だけ。




・米国の希薄化効果

株価(CRDP)と時価総額を比べることで希薄化率を計算できる。
1925年末から2001年末の期間で時価総額は株価の5.49倍になった。これはネットで1年あたり2.3%の新株が発行されたことを意味する。
自社株買いが新株発行を上回ったのは1980代の後半だけで、あとは一貫して希薄化効果が見られる。





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